実験計画から実行までを支えるNIMOシリーズで、材料開発のAI活用を身近に

— プログラミング不要の実験計画アプリと生成AIによる条件提案・手順作成 —

NIMSの研究チームは、材料開発の実験計画から実行までを支援する国産ソフトウェア「NIMO(ニモ)」シリーズを開発・拡充しました。材料探索ソフトウェア「NIMO」には、従来の数値データをもとにした探索手法に加え、研究目的や過去の実験結果、文章による評価などを踏まえて、生成AIの一種である大規模言語モデル(LLM)が候補の中から次の実験条件を提案する機能を追加しました。また、新たに開発した「NIMO Desktop」では、専門的なプログラミングを必要とせず、PCの画面操作でAIによる実験条件の提案を受けたり、実験結果をデータベースに登録したりすることができます。さらに、実験装置やデータ解析を連携させる「NIMO Controller」を開発し、LLMを活用するAIエージェントが、言葉による指示から実験手順を作成・実行できるようにしました。これらにより、研究者が手作業で実験を行う研究室から自動実験設備を備えた研究室まで、設備や目的に応じたAIの活用を支援します。NIMOの機能や多様な実験システムへの適用例などをまとめた論文は、11月4日に「Digital Discovery」誌のオンライン版に掲載されました。

従来の課題

材料開発では、原料の組み合わせや配合比、処理温度など、膨大な候補から有望な実験条件を選ぶ必要があります。研究チームは2023年、材料探索用AIと自動実験装置を連携させるソフトウェア「NIMS-OS」を公開し、その後「NIMO」として機能を拡張してきました。一方、AIを幅広い研究現場で活用するには、プログラミングに不慣れな研究者でも使える操作環境が必要でした。また、近年急速に発展している生成AIを、研究目的を踏まえた実験条件の提案や、装置・解析機能を組み合わせた実験手順の作成・実行に活用することも求められていました。こうした操作性と機能の両面から、研究現場でAIを活用しやすい環境を整えることが課題でした。

成果のポイント

研究チームは、これらの課題に対応するため、NIMOシリーズで以下の3つの開発・機能拡張を行いました。
  1. NIMO本体にLLMによる実験提案機能を追加 : 大規模言語モデル(LLM)が、研究目的や過去の実験結果、文章による評価なども踏まえ、候補の中から次に試す実験条件を提案します。
  2. プログラミング不要の「NIMO Desktop」を開発 : PCの画面操作だけでAIによる実験条件の提案を受け、結果を登録できます。手作業の実験にもAIを導入できます。
  3. 実験手順の作成・実行を支援する「NIMO Controller」を開発 : LLMを活用するAIエージェントが、言葉による指示をもとに実験手順を作成し、接続された実験装置や解析機能を連携させて実行できます。
これにより、手作業の実験からロボットによる自動・自律実験まで、研究環境に応じたAIの活用を支援します(図)。

図: NIMOによるAIと実験の連携。手作業の実験(上)と自動・自律実験(下)の双方で、実験結果を次の条件提案に反映します。

将来展望

今後は、国内の研究現場の要望を取り入れながら、探索手法やデジタル化された実験装置との連携機能を充実させ、NIMOシリーズを国産のオープンソース基盤として継続的に発展させます。国内外の装置やソフトウェアとの連携を広げ、大学・研究機関や企業が既存の実験設備を生かしてAIを導入できる環境を整えます。また、AI for Science革新的研究推進事業(ARiSE)の戦略ターゲット型が目指すAI駆動マテリアル開発システムにおいても、AIによる実験計画と装置の実行・解析をつなぐソフトウェア基盤としての活用が期待されます。こうした展開を通じて、材料探索の効率化と開発期間の短縮に貢献し、日本の材料研究・開発を支えるとともに、世界の研究現場でも活用されるAI基盤を目指します。

その他

  • 本研究は、マテリアル基盤研究センターの田村 亮 グループリーダー、吉川 成輝 主任研究員、津田 宏治 NIMS 招聘研究員、エネルギー・環境材料研究センターの松田 翔一 チームリーダーからなる研究チームによって実施されました。
  • 本研究は、JSTさきがけ「AI・ロボットによる研究開発プロセス革新のための基盤構築と実践活用」(JPMJPR24T8)、日本学術振興会 科学研究費助成事業(25K21333)および、文部科学省データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト「再生可能エネルギー最大導入に向けた電気化学材料研究拠点(DX-GEM)」(JPMXP1122712807)の支援を受けて行われました。
  • 本研究成果は、2026年11月4日に「Digital Discovery」誌のオンライン版に掲載されました。

掲載論文

題目 : NIMO: A Software Platform for Closed-Loop Materials Exploration with Diverse AI Algorithms
著者 : Ryo Tamura, Naruki Yoshikawa, Koji Tsuda, Shoichi Matsuda
雑誌 : Digital Discovery
DOI : 10.1039/D6DD00371K
掲載日時 : 2026年11月4日

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お問い合わせ先

研究内容について

NIMS マテリアル基盤研究センター
グループリーダー
田村 亮 (たむら りょう)
E-Mail: TAMURA.Ryo=nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-860-4948
NIMS マテリアル基盤研究センター
主任研究員
吉川 成輝 (よしかわ なるき)
E-Mail: YOSHIKAWA.Naruki=nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-860-4590
NIMS エネルギー・環境材料研究センター
チームリーダー
松田 翔一 (まつだ しょういち)
E-Mail: MATSUDA.Shoichi=nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-860-4637

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