複数の自律自動AIシステムが自発的に連携して材料研究を推進

〜 新規材料発見を全体効率化する自律自動AIネットワーク技術を開発 〜

NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)
国立大学法人筑波大学
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)

NIMSは、筑波大学との共同研究により、複数の自律自動AIシステムがお互いに自発的に連携してネットワークを組むことで効率的に新規材料を発見することが可能な「自律自動AIネットワーク」技術を開発し、その有用性をシミュレーションで実証しました。この研究成果は2025年12月9日にnpj Computational Materials誌にて掲載されました。

概要

従来の課題

近年、人工知能(AI)やロボット、シミュレーションを組み合わせた『自律自動AIシステム』が注目を集めており、世界中で構築・運用されています。しかし、現在の自律自動AIシステムは、他のシステムと競合することなく独立で稼働しています。各システムが異なる材料系を探索しており、データを共有することは容易でも、他のデータを自身の自律探索に活用することが困難であるためです。人間(研究者)が会話によって研究コミュニティを形成することで幅広いナレッジを共有しながら高度に研究を推進するのと同じように(図の左側参照)、多数の自律自動AIシステムがネットワークを組むことで幅広いナレッジ(データから抽出されたトレンド)を共有・活用しながら自律探索を実行することができれば、より効率的に新規材料を発見することができるでしょう。

成果のポイント

今回、当研究チームは、人間の研究コミュニケーションの方法をヒントに、多数の自律自動AIシステムがナレッジを共有しながら連携して自律探索を実行する『自律自動AIネットワーク』技術を開発しました。研究コミュニティにおいて通常人間は、ただ単に自身が持っている研究データを相手に渡すのではなくて、そのデータから得られた何らかのナレッジを相手に伝える形でコミュニケーションをとります。これを自律自動AIシステム間でも実現するために、別のシステムが学習した知見を取り込んで判断の参考にするアルゴリズムを構築することにより、データではなくナレッジを共有しながら自律自動探索を行うことを可能としました。図の右側に示すように、3つの自律自動AIシステムに、それぞれ別の物性値を最大化する探索を行わせる際、システム相互に自発的なナレッジの交換をさせたところ、最適化のスピードが向上することが観測されました。すなわち、自律自動AIネットワークの構築によって、各システムの探索効率が向上することを本研究で実証しました。

図: 人間による研究コミュニティと自律自動AIネットワークの比較。 (a) 異分野の研究者達が、コミュニケーションによって幅広いナレッジを共有することで研究者ネットワークを形成し、新規材料探索を推進。 (b) 異なる材料を探索する自律自動AIシステムが、自発的にナレッジを共有することで自律自動AIネットワークを形成し、新規材料探索を推進。

将来展望

AIやロボット、シミュレーションを組み合わせた自律自動AIシステムは、世界中で開発され、日夜材料探索を実行し続けています。その数は、今後も急速に増大し、様々な種類の自律自動AIシステムが、あまたの新規材料を発見・合成することでしょう。将来的に、これら多くの自律自動AIシステムが連携することで、より大きな価値を生み出す可能性を秘めています。今後は、さらなる自律自動AIシステムの開発を進めつつ、より巨大な自律自動AIネットワークの構築を目指します。

その他

  • 本研究は、NIMSマテリアル基盤研究センター データ駆動型材料設計グループの岩﨑 悠真 主幹研究員、筑波大学システム情報系の五十嵐 康彦 准教授からなる研究チームによって、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CREST「科学者の能力を拡張する階層的自律探索手法による新材料の創製」(JPMJCR21O1)の一環として行われました。
  • 本研究成果は、2025年12月9日にnpj Computational Materialsにオンライン掲載されました。

掲載論文

題目 : Networking autonomous material exploration systems through transfer learning
著者 : Naoki Yoshida, Yutaro Iwabuchi, Yasuhiko Igarashi, Yuma Iwasaki
雑誌 : npj Computational Materials
DOI : 10.1038/s41524-025-01851-8
掲載日時 : 2025年12月9日

関連ファイル・リンク

お問い合わせ先

研究内容について

NIMS マテリアル基盤研究センター
データ駆動型材料設計グループ 主幹研究員
岩﨑 悠真 (いわさき ゆうま)
E-Mail: IWASAKI.Yuma=nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-859-2288
筑波大学 システム情報系
准教授
五十嵐 康彦
E-Mail: igayasu1219=cs.tsukuba.ac.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-853-5344
URL: https://www.cs.tsukuba.ac.jp/~igayasu1219 (Igarashi Lab @Tsukuba Univ.)

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