物質・材料研究機構 (NIMS) の理事長からみなさまへ

2022.04.01 更新

NIMS理事長 宝野 和博


2022年4月1日付で国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)の第4代理事長に就任いたしました。NIMS発足以来、代々理事長は他機関での経営経験者が就任して参りましたが、NIMSでキャリアを積んだ研究者が初めて理事長に就任することとなり、その重責をかみしめております。

私は1995年に大学からNIMSの前身である科学技術庁金属材料技術研究所に移ってまいりましたが、当時は企業との共同研究、外部資金の獲得、出張、ポスドク雇用等で多くの制約があったことに驚きました。2001年に無機材質研究所とともにNIMSとして独立行政法人化され、初代の岸輝雄理事長のもとで進められた改革により、NIMSには大きな自由度と裁量で研究に専念できる環境が整いました。同時に研究者は大学等との競争環境にさらされることとなり、個々の研究者が外部でも高く評価されることが重要になりました。NIMSはそれまで研究対象としていた金属・無機材料に、ポリマー、バイオ材料を加え材料科学全般をカバーするようになり、そのために外部から多くの人材を採用し、それがNIMSの活性化につながりました。2007年に世界トップレベル研究拠点(WPI)プログラムにMANA (国際ナノアーキテクトニクス研究拠点) が採択されたことは、独法化後の変化を表す最も象徴的な出来事でした。また若手国際研究センター(ICYS)が創設され、世界中から多くの人材が集まるようになり、その一部の方々は現在NIMSの研究職として第一線で活躍しています。第2代の潮田資勝理事長の下でNIMSの国際化はさらに推し進められ、物質・材料分野での世界的なプレゼンスが高まったように思います。

2016年に就任した第3代の橋本和仁理事長のもとで、NIMSは特定国立研究開発法人に移行し、国家戦略に基づき世界最高水準の研究開発成果を創出し社会に貢献するミッションが明確に定められました。また、そのためのミッション研究に加え、研究者個人が自由な発想で提案する基礎研究を醸成し、NIMSの研究力を高めるという方針が定められました。組織としては二次電池や水素で代表されるエネルギー環境分野の重点化、データ駆動型研究の導入、材料オープンプラットフォーム(MOP)による企業との連携推進、研究人材の交流促進、起業支援などにより、研究成果を社会還元することを目指しています。私はこの4年間、橋本前理事長のもとでNIMS運営に参画して参りましたので、これらの施策を着実に結実させることに最善を尽くします。

それに加え、第4代理事長として取り組むべき重要な課題は、NIMSの研究力を一層強化するための優秀な人材の確保です。NIMSは材料科学分野の論文の被引用件数によると、2012年以来国内トップの地位を維持していますが、世界ランキングをみると年々順位を下げています。これは材料科学に限らず、我が国の科学技術全般に共通した傾向ですが、素材産業が強いといわれてきた我が国にとっては材料科学分野での基盤研究の世界的地位の低下は憂慮すべき問題です。NIMSは研究に専念できる恵まれた環境を整え、世界トップレベルで競える人材を確保し、材料科学分野での国際競争力を上げる努力を行って参ります。また、2023年度より始まる第5期中長期計画を第6期科学技術・イノベーション基本計画ならびにマテリアル革新力強化戦略等の国家戦略に沿って策定し、これらを着実に実施することにより特定国立研究開発法人としてのNIMSのミッションを果たして参ります。世界を変えるような物質の発見や材料の開発を志すとともに、カーボンニュートラル、量子材料、ウェルビーイングなどの重点分野で、NIMSがどのように貢献ができるかを見極め、我が国の産業競争力に資する基盤研究を推進できるようNIMSの舵取りを行う所存です。

引き続き、皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。