物質・材料研究機構 (NIMS) の理事長からみなさまへ

2021.01.01 更新

NIMS理事長 橋本 和仁


物質・材料研究機構 (NIMS) は、2研究所を統合し独立行政法人として発足してから本年で20周年を迎えます。この間サイアロン蛍光体や超耐熱合金、ナノシート等に代表される、様々な研究成果を創出してきました。次の20年も、さらに多くの成果を創出し、物質・材料科学全体を牽引する国際的な中核機関として飛躍し続ける法人でありたいと思いを新たにするところです。

菅総理は昨年10月に行われた初めての施政方針演説において、2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするという極めて高い政策目標を掲げました。しかもこれをエネルギー・環境政策に留めず、技術革新を促し、産業構造や経済社会の変革をもたらすための産業政策としての側面も打ち出しています。カーボンニュートラルの達成のため、今まさに既存の技術の組み合わせだけでなく、新たな科学技術を基礎としたイノベーションが求められています。

NIMSは、水素、蓄電池、次世代太陽電池、熱電材料に関する研究から貢献できると考えており、水素に関しては、昨年度より水素液化技術の開発を目指した取り組みを進めており、さらに液体水素下での材料の信頼性評価を新たな取り組みとして開始する予定です。また、蓄電池研究については、これまでも全固体電池やリチウム空気電池などのポストリチウム電池の研究を進めてきましたが、最近、更なる研究開発の加速を目指し、大学や企業と連携して先進蓄電池の研究開発拠点の形成を開始したところです。

また、現在政府においては、「マテリアル革新力」を強化し、『マテリアル革新力により、経済発展と社会課題解決が両立した持続可能な社会への転換を世界の先頭に立って取り組み、貢献していく国』を目指す『マテリアル戦略』も策定しており、これは新たな科学技術・イノベーション基本計画にも反映される見通しです。

NIMSではこうした動きを受け、世界の材料データプラットフォーマーになることを掲げて、我が国の材料開発を格段に向上させるためのデータ中核拠点の形成を開始いたします。これは「データをつくる」「データをためる」「データをつかう」プラットフォームを形成するものであり、産学官の優れた研究者、全国の大学、公的機関の先端共用設備と連携することで日本全国の材料データを集約・共有し、AI・データ駆動型研究による新材料開発の高速化が期待されています。

一方、昨年は、新型コロナウィルス感染症の発生・拡大により、世界中が大きな混乱に陥りました。未だ収束に至っていない中、世界は大きな変革を迫られています。研究活動においては、デジタルトランスフォーメーションが重要な課題です。NIMSは、コロナ禍においても課せられた使命を果たすため、研究活動を停滞させるわけにはいきません。自らの研究活動のみならず、共用設備を利用した全国の研究の停滞を防ぐため、ニーズが高い透過型電子顕微鏡、NMR、物性解析装置への遠隔機能や自動測定機能の整備を進めています。また、一般公開やNIMS WEEK等のイベントも先駆けてwebで実施、多数ご参加いただき、手ごたえを得たところです。本年も、感染症対策を確実に行いながら、研究開発の停滞を回避し、物質・材料分野の継続的なイノベーション創出のための役割を果たしてまいります。

国際競争が激化し続ける中、物質・材料分野の強みこそが我が国の競争力の源泉であり、NIMSに対する産学官からの期待は高まり続けていると認識しています。その期待に応え、自らを「世界で最もイノベーションに適した組織」へと変革し続けるためには、最大のパフォーマンスを生み出す最適な研究体制の構築と適切な資源配分、そして職員一人ひとりの意識改革を高めることが必要不可欠です。本年がNIMSにとって「イノベーション創出のための改革と飛躍の年」となるよう、理事長として更なるマネージメントの強化に取り組んでいきます。

ご支援、ご協力をよろしくお願い致します。