代表的な研究成果
2024年09月05日 更新
NIMSは長期的なビジョンのもと、物質・材料に関わる基礎や基盤を築く研究を行ってきました。こうして生み出された画期的な物質や材料が実用化され、社会に役立つまでには長い準備期間が必要で、そうした材料にはすぐれた機能や特性だけでなく、強度、安全性、信頼性などを併せ持つ必要があります。このページでは、準備期間を経て応用化が進んでいる研究成果の一部をご紹介します。

サイアロン蛍光体
高効率を実現しながら耐久性・耐熱性にもすぐれた性能を発揮
NIMSの開発したサイアロン蛍光体は、青色発光ダイオードを用いて効率よく発光させることができ、耐久性と耐熱性にもすぐれているため、環境負荷の高い 水銀使用の蛍光灯に代わる「白色LED照明」の材料として、すでに多彩な白色発光を実現。環境負荷の少ない次世代照明への応用が期待されています。
また、白色LEDは液晶テレビのバックライトなどにも使用されるため、高輝度化により高発色・高画質化も期待できます。

次世代超合金
民間企業との協力により地球温暖化ガス低減に貢献する超耐熱材料の開発に成功
材料の高温特性やミクロの組織を予測する材料設計技術により、NIMSは種々の超耐熱材料の開発に成功しました。
特にニッケル (Ni) を主な原材料とする 単結晶超合金は、民間企業との協力により、最新型ジェットエンジンのタービン翼としてすでに実用化され、国際線1機あたり年間約1億円の燃費削減効果を発揮するとともに、地球温暖化ガスの低減にも貢献しています。今後、高効率発電ガスタービンなどにも順次適用される予定です。

Dyフリー磁石の開発
稀少資源 (レアアース) を使用しない、高保磁力の磁石を開発
材料のナノ組織の解析と制御により、稀少資源である“Dy (ジスプロシウム) ”を用いずに保磁力の高い磁石を開発しました。
自動車のモーター部分等で使用される「ネオジム磁石」は強力な永久磁石ですが、高熱下では保磁力が落ちるため、通常は希少元素のDyを添加します。しかし、Dyには量的リスクと偏在リスクがあることから、Dyを使用しなくても同等の保磁力を持つ高性能永久磁石の開発が望まれていました。

FMS合金制振ダンパー
巨大地震から高層ビルを繰り返し守る
東日本大震災の際、遠く離れた大阪の高層ビルが長い時間大きく揺れたことでも話題となった長周期地震動。これを抑えるため、最新ビルの多くに金属製の制振ダンパーが導入されています。しかし、巨大地震を経験すると 性能が低下するため、大掛かりな工事を行い交換する必要があります。
NIMSは繰り返し変形に対する疲労強度が高い形状記憶合金を開発しました。外部応力を材料自身で緩和できることに加え、疲労強度が従来の材料と比べ10倍も高いため、交換などのメンテナンスが不要な建造物用制振ダンパー材料として実用化されています。NIMSは巨大地震から建築物を守ります。
(Photo : 株式会社 竹中工務店)

超高密度記録媒体、HAMRメディア
高度情報化社会の根幹を支える
世界中のデジタル情報を格納するデータセンター。主役はハードディスクドライブ(HDD)です。今のHDDを使い続けると10年後には世界の総消費電力の10%をデータセンターが消費するというとんでもない予測が。省エネのために、小さい面積に多くの情報を保存する高密度化が必要です。NIMSは新規材料のFePtを使った高密度記録媒体、HAMR(ヒート アシステッドマグネティック レコーディング)メディアの開発に世界に先駆けて成功しました。このHAMRメディアのHDDへの搭載は既に始まっており、高度情報化社会で活躍しています。
※HDDドライブ、メディアの画像はイメージ画像です。HAMRメディアが搭載された画像ではありません

ビスマス系超伝導材料
電気の送り方に革命を起こす
1988年、NIMS(当時は金属材料技術研究所) で発見された「ビスマス系超伝導材料」が世界中の研究者に大きな衝撃を与えました。
超伝導とは、物質の温度を下げていくとある温度で突然、電気抵抗がゼロになる現象のこと。1986年にスイスの研究者が、それまで極低温でしか起こらなかった超伝導現象を35K(-238℃)で発現する材料を発見し、ノーベル物理学賞を受賞しました。その後、数種類の高温超伝導物質が発見されましたが、NIMSが発見した「ビスマス系超伝導材料」は、それまでとは違う元素の組み合わせで作られており、しかも100K(-173℃)以上の高い温度で超伝導状態になることで、研究者の想像を超えた範囲で高温超伝導物質は多く存在することを示したのです。
ビスマス系超伝導材料は現在でも電力が減らない送電ケーブルや超強力電磁石の材料として注目されていて、すでに実用化に向けての試験も始まっています。
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