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高Cr耐熱鋼溶接部の長時間材質劣化機構

Long-Term Degradation Mechanism of High Cr Heat-Resistant Steel Welded Joint

澤田 浩太 SAWADA.Kota@nims.go.jp

先進的な高効率火力発電プラントは、二酸化炭素排出量の抑制に貢献しますが、それはプラントの長期安全運転の実現によって初めて実効的な意味を持ちます。しかし、最新の高効率火力プラントにおいて、部材である高Cr鋼の特に溶接部のクリープ強度低下による損傷事例が世界中で報告されており、溶接熱影響部で生じるType IV破壊がクリープ強度低下の主な原因であると考えられています。この破壊の機構解明、抑制を目的として、長時間クリープに伴う微細組織の変化と破壊挙動の関連を検討しています。 右図は、ASME Gr.122鋼(11Cr-0.4Mo-2W-VNbN)溶接熱影響部細粒域における元素マップ像に基づく析出物分布を示しています。これまで知られているM23C6炭化物やLaves相に加えて、ピンク色で示す粗大複合窒化物(Z相)が、本来の強化因子であるMX炭窒化物を消費しながら旧オーステナイト粒界近傍に析出し、変形抵抗を低下させていることが分かりました。

元素マッピングによる有害相の分布解明

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ASME Gr.122鋼溶接熱影響部細粒域のクリープ後の析出物分布。
試験条件:650℃・30MPa, 21467h
左は明視野像、右は元素マップ像に基づくカラーマップ。
赤:M23C6, 緑:Laves相, ピンク:Z相
点線は旧オーステナイト粒界 *強化相であるMXは消失している。