25_Murase_face.psd

原子力材料の複合的照射環境下における「その場」試験

In-Situ Testing Method for Nuclear Materials under Combined Irradiation Condition

村瀬 義治 MURASE.Yoshiharu@nims.go.jp

原子力研究開発は低炭素社会の実現に向けた国の重要施策の1つであり、とりわけ、安全性、信頼性に関わる材料研究開発は最重要研究課題に位置づけられています。

これまでの原子力材料研究は原子炉等で照射された照射後材料の損傷データを基に発展してきましたが、今後、材料開発の高度化を図るためには、実際の原子炉環境と同じように、照射損傷に加えて、応力や核変換ガス(水素やヘリウム)が同時に影響を及ぼす複合的照射環境下での材料劣化挙動を明らかにすることが不可欠です。しかしながら、実機の原子炉を用いた「その場」試験は経済的、技術的に非常に困難であるため、代替手段としてイオン加速器の有効活用による材料試験データの取得に期待が集まっています。

右図はNIMSサイクロトロン加速器を用いた「その場」材料試験機の模式図を示しています。エネルギー減衰器によって効果的に照射損傷と軽イオン(プロトン、α粒子など)を同時導入する環境下で材料試験を行うことができます。このような複合的照射環境下での「その場」材料試験技術を確立することで、原子力材料で最も懸念される照射応力腐食割れの機構解明に貢献することを目指しています。

25_Murase0.ai

軽イオンビーム: P 17MeV, P 4MeV, α 20MeV, 3He 26MeV
はじき出し損傷レート: ~1×10-6 dpa/s (減衰器使用時)
核変換ガス原子導入レート: ~1×104 appmH/dpa, ~4×103 appmHe/dpa
試験温度: 室温~500℃
試験試料: オーステナイト鋼(SUS316など)、低放射化フェライト鋼(F82H鋼など)