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低合金鋼の強靭化

Strengthening and Toughening of Low-Alloy Steels

木村 勇次 KIMURA.Yuuji@nims.go.jp

次世代の新鋼構造物の実現やCO2排出量削減を目指した輸送機のさらなる軽量化の観点から リサイクル性に優れた単純な低合金組成で1500 MPa超級高強度鋼およびその部材の開発への期待が高まっています。

これまで、1500 MPa超級高強度鋼では延性、衝撃靭性、耐遅れ破壊性、疲労特性、成形性などの特性が低いことからその適用範囲が限定されてきました。

右図は、開発鋼の衝撃吸収エネルギーの温度依存性です。ナノ~ミクロまでの階層的組織制御で1800MPaの降伏強さで 0.4%C-2%Si-1%Cr-1%Mo鋼の靭性を大幅に改善することに成功しました。低温ほど靭性が上昇するという靭性の逆温度依存性も発見しました。(Science, 320 (2008), p.1057)

現在は、靭性向上のメカニズムの解明と開発した組織制御技術のボルトなどの部品への展開を進めています。

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開発材と通常焼入れおよび焼戻し材(通常材)のVノッチシャルピー衝撃吸収エネルギーと試験温度の関係。図中の矢印は500Jの衝撃エネルギーで完全に破断なかった試験片を示す。