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高・多機能酸化物ナノセラミックスの創製

Fabrication of High- and Multi-Functional Nano-Crystalline Oxide Ceramics

森田 孝治 MORITA.Koji@nims.go.jp

先端産業分野での実用化を図る上では、単一機能のみの高度化では応用範囲が極めて限定されるため、個々の機能特性の高度化に加え、複数機能を重畳させた新規材料の開発が求められています。本研究は 「焼結機構と機能発現機構の解明(基礎基盤)」に立脚した材料設計と創製技術の構築を図り、尚且つこれらを相互に連鎖させることにより、組織因子(組織・状態・組成)をナノスケールで高度に制御した「高・多機能ナノセラミックスの開発」を目指しています。右図は、次世代高速焼結手法として注目されているパルス通電焼結(Pulsed-Current-Sintering : PCS)装置を利用して、透光性と高強度を併せ持つ微細結晶粒スピネル(MgAl2O4)の創製例を示したものです。高速昇温はPCS法の特徴とされていますが、一般に使用される100℃/min程度の高速昇温の場合、ある程度の緻密体の創製は可能ですが、ナノレベルの微細な焼結欠陥が残留するため、スピネルは不透明です。これに対し、10℃/min程度まで昇温速度を低速化すると、焼結欠陥をほぼ排除でき、優れた透光性を有するスピネルを得ることが出来ます。更に、この手法では焼結温度の低温化も可能となるため、緻密化に加え微細化を同時に実現することができ、従来比2倍の破壊強度改善も達成することが出来ました。

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PCS法で創製したMgAl2O4スピネルの透光性と破壊強度の昇温速度依存性(破線:既存データ )