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CALPHAD法による構造材料の相安定性解析

Phase Stability Analysis Based on the CALHPAD Method for Structural Materials

阿部 太一 [ABE.Taichi@nims.go.jp]

構造材料は目的の特性を得るため、精密な材料設計、熱処理・加工条件設計がなされています。それらを全て実験により最適化することは大変な時間と労力が伴いますが、計算科学的手法を併用することで効率的な設計が可能となります。その基礎となるのが物質各相の自由エネルギー関数です。そしてその自由エネルギー関数を種々の熱力学データを基に精密に決定する方法は、CALPHAD法と呼ばれ、その作業を熱力学解析と呼んでいます。現在、Ni基やFe基合金など多くの合金系に対して精力的に熱力学解析が進められており、熱力学データベースとして広く利用されています。図1は超高温用の構造材料として注目されているIr-Nb合金の計算状態図でこれを基にγ-γ’型ミクロ組織の組織設計が可能となります。また高Crフェライト鋼の長時間クリープ中の組織変化の推定には、化合物の相安定性が重要で、熱力学解析により強化因子のMX相がZ相へ変態することが明らかになり、長時間域での組織設計への応用が考えられています。

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図1: Ir-Nb合金状態図。相境界は熱力学解析により得られた自由エネルギーより計算した(プロットは実験データ、Nb-rich側は準安定系)これによりγ(FCC)とγ’(L12)の二相組織設計が可能となる(オレンジの領域)。