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太陽光を利用する防食法

Corrosion Protection to Utilize Solar Power

川喜多 仁 KAWAKITA.Jin@nims.go.jp

屋外で使用される構造材料は厳しい腐食環境に曝されることがあり、今後は資源や環境負荷に配慮した防食対策が必要です。腐食は構造材料中の電子がエネルギーの高い状態から低い状態へと降下することで起こります。光電変換材料への光照射により生じるエネルギー状態の高い電子を構造材料に注入することで腐食を抑制できます。鍵となるのは、光電変換材料の電子のエネルギー状態(光電位)であり、その決定因子を解明しています。

右図は酸化チタンを中性水溶液に浸漬し、紫外線を照射した際の光電位の結晶面方位に対する依存性を測定した例です。この依存性は、光照射により電子(マイナス)と一対で生じる正孔(プラス)の酸化チタン表面に移動する速度が結晶面方位によって違うためであることも分かりました。

このように、光電位の決定因子を解明することで、太陽光を利用した構造材料の防食法に最適な光電変換材料を設計することができます。

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特定の結晶面が配向した酸化チタンを中性水溶液に浸漬し、紫外線を照射した際の光電位を示した図。それぞれの結晶面に対する依存性が表れている。