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低温環境下における構造材料の変形と破壊

Deformation and Fracture of Structural Materials at Low Temperature

小野 嘉則 ONO.Yoshinori@nims.go.jp

ロケットエンジンは、液体水素と液体酸素を推進薬として、それらの燃焼反応エネルギーを推力に変換しているため、エンジン用材料の多くは低温環境下に曝されます。H-IIAやH-IIBロケットの信頼性を向上させるためには、材料の低温環境下での特性を把握することはもちろん、変形・破壊挙動を理解することが重要です。

右図は、エンジン用チタン合金(Ti-5Al-2.5Sn ELI合金)の高サイクル疲労特性が特異な温度依存性を示す原因について、破面観察・解析をもとに検討したものです。低温では、双晶変形に起因して、き裂発生寿命が短くなり、その結果高サイクル疲労強度が低くなると考えられます。

構造材料の使用環境下での特性把握とともに、変形・破壊挙動を理解する、またそれらを実現するための手法を確立していくことにより、ロケットエンジン材料をはじめとした構造材料の信頼性向上に貢献したいと考えています。

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107サイクル疲労強度と引張強度の比の温度依存性。低温では経験則に反して疲労強度が低くなる。疲労破壊起点部の方位解析の結果、面方位は、室温ではすべり面、低温では双晶面であり、き裂発生機構が低温で変化することが示唆された。