シリコン上の縦型GaNデバイス実現に道を拓く低抵抗バッファー層を開発

— GaNのエピタキシャル成長と縦方向の電気伝導を両立 —

NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)

NIMSは、安価なシリコン(Si)ウェハー上への縦型窒化ガリウム(GaN)デバイスの実現に不可欠な、極めて低抵抗かつ優れた熱安定性をもつGaNエピタキシャル成膜技術の開発に成功しました。この新技術「アモルファスライク中間層(AL-IL)」は、Siと窒素(N)から成る極薄膜によって、SiとGaNの格子不整合を緩和するとともに、基板とGaN膜の間で縦方向に電流を流すことを可能にします。本成果は、シリコンウェハー上での縦型GaNデバイス作製に向けた基盤技術であり、将来的には高効率パワーデバイスやマイクロLEDデバイスの低コスト化に貢献することが期待されます。この研究成果は、5月29日にAdvanced Physics Research誌に掲載されました。

従来の課題

近年、AIデータセンターの急増などに伴う電力消費量の増加が大きな社会問題となっています。また、将来の脱炭素化に向けて、電気自動車やマイクロLEDを普及させるにあたり、「高効率×低コスト」な電力変換素子や発光デバイスを大規模に量産する鍵として期待されているのが、安価なシリコンウェハー上での縦型GaNデバイス化です。しかし、従来は、縦型GaNデバイスを実現するには、高価な単結晶GaN基板の利用が前提であり、コストや生産性の面で課題がありました。単結晶GaN基板を使う代わりに安価なシリコンウェハーを使おうとすると、SiとGaNの間に形成される中間層(バッファー層)が高抵抗であるため、基板とGaN膜の間で縦方向に電流を流すことが難しく、縦型デバイスへの応用を阻んでいました。

成果のポイント

今回、NIMSの研究チームは、シリコンウェハー上でGaN薄膜をエピタキシャル成長させると同時に、GaN/Si界面で低抵抗な縦方向伝導を実現する新しいバッファー層(アモルファスライク中間層(AL-IL))形成技術を開発しました。
この技術では、図のように、シリコンウェハー上に1ナノメートル未満(ナノは10億分の1)の金属膜を形成し、急速加熱処理を行った後にスパッタリングでGaN成膜を行うことで、SiとNを含む極薄のアモルファスライク中間層(AL-IL)が形成されます。この中間層がSiとGaNの格子不整合を緩和し、GaNのエピタキシャル成長を可能にすることを、透過型電子顕微鏡観察などにより確認しました。さらに、スパッタGaN膜を下地層として有機金属気相堆積(MOCVD法)法でGaNを成膜すると、高品質なGaN膜が成長することを確認しました。GaN膜とSi基板の間に電極を形成して電流—電圧特性を評価したところ、縦方向(図: 右図の黄色矢印方向)に電流が流れ、デバイス作製に向けて理想的な電流特性を示すことが分かりました。これは、シリコンウェハー上の縦型GaNデバイスに向けて重要な要件の一つを満たす成果です。

図: Si(111)上に、アモルファスライク中間層(AL-IL層)を介してGaN膜がエピタキシャル成長するイメージ

将来展望

シリコンウェハー上の縦型GaNデバイスは三次元的に電流を流すことができるため、二次元的に電流を流す横型デバイス(図: 右図において基板と平行方向に電流を流すデバイス)と比較して、電流量を数桁も向上させることが可能であるほか、シリコンウェハー裏面に電極を形成することができるため、製造コストを大幅に低減できます。本技術によって縦型GaNデバイスが実現された場合、マイクロLEDデバイスの広範な普及、AI技術の鍵を握るデータセンターの省電力化、さらには電気自動車の高効率化など、次世代デバイスの普及に弾みがつくことが期待されます。

その他

  • 本研究は、NIMS電子・光機能材料研究センター 超ワイドギャップ半導体グループ 川村 史朗 主幹研究員、マテリアル基盤研究センター 三石 和貴 副センター長からなる防衛装備庁 安全保障技術研究推進制度「縦型GaN on Siデバイス実現に向けた界面制御の基礎研究」の一環として行われました。
  • 本研究成果は5月29日にAdvanced Physics Research誌(オープンアクセス)に掲載されました。

掲載論文

題目 : An Advanced Epitaxial Strategy Enabling Vertical GaN Devices on Silicon Wafers
著者 : Fumio Kawamura, Takeyoshi Onuma, Kazutaka Mitsuishi
雑誌 : Advanced Physics Research
DOI : 10.1002/apxr.70143
掲載日時 : 2026年5月29日

関連ファイル・リンク

お問い合わせ先

研究内容について

NIMS 電子・光機能材料研究センター
超ワイドギャップ半導体グループ
主幹研究員
川村 史朗 (かわむら ふみお)
E-Mail: KAWAMURA.Fumio=nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)

報道・広報について

NIMS 国際・広報部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1
E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 029-859-2026
FAX: 029-859-2017

支援事業について

防衛装備庁 防衛イノベーション科学技術研究所
プログラム管理官付 木村 忠良
〒150-6023 東京都渋谷区恵比寿 4-20-3
E-Mail: funding=cs.atla.mod.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)
TEL: 03-3268-3111 (内線 27044)