茨城県科学技術振興財団「2023年度 つくば奨励賞」をNIMS研究員4名の受賞が決定

2023.11.27


茨城県科学技術振興財団 (理事長 : 江崎玲於奈)「2023年度 つくば奨励賞」について、高分子・バイオ材料研究センターの今村岳 主任研究員、南皓輔 主任研究員、吉川元起グループリーダー、磁性・スピントロニクス材料研究センターの内田健一 上席グループリーダーの4名が選出されました。

「つくば賞・つくば奨励賞」とは「茨城県内において科学技術に関する研究に携わり、顕著な研究成果を収めた研究者を顕彰」するものです。今村岳 主任研究員、南皓輔 主任研究員、吉川元起グループリーダーの授賞の対象となった研究主題は「膜型表面応力センサ (MSS)を用いた嗅覚センサの総合的研究・開発と社会実装」、内田健一 上席グループリーダーの授賞の対象となった研究主題は「スピンカロリトロニクスに関する基盤研究」です。


2023年度 つくば奨励賞

実用化研究部門

受賞者 : 今村 岳の顔写真
今村 岳 主任研究員
(高分子・バイオ材料研究センター バイオ材料分野 電気化学ナノバイオグループ)
受賞者 : 南 皓輔の顔写真 主任研究員
(高分子・バイオ材料研究センター バイオ材料分野 嗅覚センサグループ)
受賞者 : 吉川 元起の顔写真 グループリーダー
(高分子・バイオ材料研究センター バイオ材料分野 嗅覚センサグループ)

【研究主題】
膜型表面応力センサ (MSS)を用いた嗅覚センサの総合的研究・開発と社会実装

人の五感 (視覚、聴覚、味覚など) は様々な形で工業化されてきた。しかし、嗅覚センサーに関しては40年以上に及ぶ研究開発が行われてきたが未だ社会実装に至っていない。

受賞者らは、嗅覚センサーとして知られる膜型表面応力センサー (MSS) で生じる物理現象を解き明かすことで粘弾性的特性を理論式として表現することに成功し、様々なニオイ分子に対応可能な化学的多様性を持たせるナノ構造等の嗅覚センサーの実現に成功した。一方、クラウド上に設けた蓄積されたデータを基にオンラインで高精度にニオイ識別ができる新たなシグナル解析法の開発にも成功し社会実装に漕ぎ着けた。本研究主題は、嗅覚センサーの統合的な研究開発を通じて誰でもがニオイのデジタル化を体験できる新な市場環境の提供に成功した。NIMS 発ベンチャー「株式会社Qception」を設立し社会実装を開始しており、予想される事業規模も大きく今後の事業展開が期待できる。


若手研究者部門

受賞者 : 内田 健一の顔写真
内田 健一 上席グループリーダー
(磁性・スピントロニクス材料研究センター スピンエネルギーグループ)

【研究主題】
スピンカロリトロニクスに関する基盤研究

スピンカロリトロニクスは電子の持つスピンと電荷が熱と相互作用する融合的な研究領域である。内田氏らは熱流によるスピン流生成現象である「スピンゼーベック効果」を発見 (2008 年) し、この分野のパイオニアとして世界を先導している。内田氏は2016 年に物質・材料研究機構に着任して以降、「異方性磁気ペルチェ効果」や「磁気トムソン効果」と呼ばれる物理現象を次々と発見・観測することに世界に初めて成功するなどの顕著な研究業績を挙げている。

内田氏はまた昨年36 歳という異例の若さで科学技術振興機構「戦略的創造研究推進事業ERATO」の「内田磁性熱動体プロジェクト」の研究総括に抜擢されるなど、将来の大きな飛躍が期待できる若手研究者である。