「2024年度 つくば賞・つくば奨励賞」をNIMS研究員3名が受賞

茨城県科学技術振興財団(理事長:江崎玲於奈)の「2024年度 つくば賞・つくば奨励賞」について、谷口 尚 理事、電子・光機能材料研究センターの渡邊 賢司 特命研究員、マテリアル基盤研究セ ンターの張 晗 主任研究員の3名が選出されました。

「つくば賞・つくば奨励賞」は、茨城県内において科学技術に関する研究に携わり、顕著な研究成果を収めた研究者を顕彰し、研究者の創造的な研究活動を奨励するものです。

谷口 尚 理事、渡邊 賢司 特命研究員の授賞の対象となった研究主題は「六方晶窒化ホウ素の高純度化技術開発と2次元量子材料応用」、張 晗 主任研究員の授賞の対象となった研究主題は「電子顕微鏡に技術革新をもたらす超高輝度ナノエミッターの実用化」です。


2024年度 つくば賞

谷口 尚 理事
(物質・材料研究機構) 

渡邊 賢司 特命研究員
(物質・材料研究機構 電子・光機能材料研究センター)  

【研究主題】
六方晶窒化ホウ素の高純度化技術開発と2次元量子材料応用

窒素原子とホウ素原子からなる化合物である六方晶窒化ホウ素(h-BN)は、断熱材や絶縁体等として長年実用に供されてきたが、高純度単結晶の合成例はなく、電子材料としての応用は全く未知数であった。
谷口、渡邊の両氏は、高圧合成技術を用いて、高純度単結晶の合成に世界に先駆けて成功し、非常に高効率な遠紫外発光特性を発見した。さらに、高純度h-BN単結晶は、グラフェンを支持する基板としても優れた特性を示すことが見出された。
この高純度h-BN基板を世界40ヶ国、350の研究グループに試料提供を行うことで連携研究を進め、グラフェンをはじめとする2次元原子層材料における数多くの新たな物理現象の発見に繋がり、累計2,000報以上の共同研究論文が出版されることになった。
このような2次元原子層材料の黎明をもたらした高インパクトの学術研究成果は、谷口、渡邊の両氏の高純度h-BN基板なくしては実現しなかった。

2024年度 つくば奨励賞

実用化研究部門

張 晗 主任研究員
(物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究セ ンター)

【研究主題】
電子顕微鏡に技術革新をもたらす超高輝度ナノエミッターの実用化

現代の半導体製造や生物医学研究などではナノスケールでの操作が求められ、そのための「目」の役割を果たす電子顕微鏡には高い輝度の電子源が必要になる。ところが、従来の方法では安定した電子放射特性を確保できず、実用的な電子源が実現できていなかった。
受賞者は、LaB6 ナノワイヤからLa 原子クラスターを作成することでこの状況を打破し、堅牢で実用に耐える超高輝度の量子ナノ電子源を実現することに成功した。この新手法は電子顕微鏡のみならず電子加速器などの新しい小型電子源の基盤となり、その応用研究にも大きく寄与するものと考えられる。
本研究は、将来のナノテクノロジーを支える電子顕微鏡に必須の電子源を実現したものであり、その社会への波及効果は非常に大きい。また既にNIMS 発ベンチャー企業が設立されて実用化に向けた事業が開始されており、今後の発展が期待できる。

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