廣崎尚登フェローが岩谷直治記念賞を受賞

廣崎 尚登 フェローが第53回(2025年度)岩谷直治記念賞を受賞しました。

「岩谷直治記念賞」は、わが国高圧ガス関係諸事業の発展に尽力した岩谷直治氏の業績を記念し、エネルギーおよび環境に関する優れた技術開発で、かつ顕著な産業上の実績が認められている業績を表彰することにより、斯界の一層の発展を図り、国民生活の向上に寄与することを目的とします。

「岩谷直治記念賞」を受賞した廣崎 尚登 フェローの授賞の対象となった研究主題は、「新しい蛍光体の発明と白色LED照明の普及による電力消費量削減」です。

廣崎 尚登 (ひろさき なおと)

【受賞者名 (所属/職制) 】
廣崎 尚登 (国立研究開発法人物質・材料研究機構/フェロー)
江本 幸秀 (デンカ株式会社/主幹)
上田 恭太 (三菱ケミカル株式会社/主席研究員)
髙橋 向星 (株式会社サイアロン光学/代表取締役)
【表彰名】
第53回(2025年度)岩谷直治記念賞
【受賞タイトル】
新しい蛍光体の発明と白色LED照明の普及による電力消費量削減
【研究業績概要】

本受賞は白色LED用蛍光体の開発に関する。白色LEDは、青色LEDと蛍光体を組み合わせることで白色光を得る技術である。しかし1995年に青色LEDが登場した当時、自然な白色光を実現できる蛍光体は存在しなかった。そこでNIMSは、もともとエンジン材料として利用されていたサイアロンセラミックスに着目し、これを蛍光体として活用する新しい発想を展開した。研究の結果、青色光を赤・黄・緑に変換する複数の材料を開発し、企業との共同研究を通じて製品化に成功した。これらを搭載した白色LEDは照明や液晶テレビの光源として世界中に普及し、現在では標準的な材料として定着している。

本技術の起点はサイアロンの活用である。従来の蛍光体は酸化物を母体結晶として用いていたが、酸素を窒素に置き換えることで結晶場の性質が変化し、赤色黄色や緑色の発光が可能になると考えた。研究を進めた結果、αサイアロン黄色蛍光体、CaAlSiN₃赤色蛍光体、βサイアロン緑色蛍光体、La₃Si₆N₁₁黄色蛍光体など多くの新規材料を発見した。これらは青色LEDが放つ450nmの光で効率よく励起され、耐久性と耐熱性にも優れるため、白色LED用途に極めて適している。

さらにNIMSとデンカはαサイアロンとβサイアロンの研究を共同で進め、欠陥制御や酸素不純物の排除、製造工程の改良により発光効率を高め、2008年に上市に成功した。またNIMSと三菱ケミカルはCaAlSiN₃とLa₃Si₆N₁₁の研究を進め、固溶元素の添加による波長制御を実現し、商品化を達成した。これらの成果により、従来技術に比べて消費電力を1/2から1/10に削減できる照明が実現し、世界的な省エネルギーに大きく貢献している。

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