界面化学200年の常識〜濡れ方は一つに定まる〜を覆す!
濡れ方が二状態に分岐する表面設計方法
— PFASフリーの撥水材料開発にも道。濡れ性制御の新たな設計指針を提示 —
2026.04.16
NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)
NIMSは、一つの固体表面上で、液体が「付着する状態」と「弾かれる状態」が同時に存在する状態、つまり濡れ方が二状態に分岐する現象を発見しました。これは、平坦面では「どの液体をどの固体に接触させるかで濡れ方は一つに決まる」という、200年以上信じられてきた界面化学の常識を覆す発見です。さらに、この現象を引き起こすための普遍的な表面設計原理も明らかにしました。本成果は、4月2日にAdvanced Materials Interfaces誌に掲載されました。
従来の課題
水滴は固体に触れると、平らに広がる(付着する)こともあれば、玉のように弾かれることもあります。「濡れ」というこの現象は、自然現象から日常生活まであらゆる場面で見られ、その制御はインクジェットや塗装産業などあらゆる産業分野の基盤技術となっています。1805年Thomas Youngは固体と液体の組み合わせごとに、濡れ方は常にただ一つの状態に定まる」という法則を発見しました。これは長らく界面科学の常識とされてきました。
成果のポイント
今回研究チームは、同一基板において水滴が「付着する」/「弾かれる」という、相反する二つの状態で共存する現象を、油に沈めた平坦基板に水滴を接触する実験で発見しました。設計の鍵は、固体表面と油の中に、水素結合という特定の分子の「手」を用意し、その「手の数」を精密にコントロールすることです。その結果、同じ基板と油の組み合わせにも関わらず、水滴接触および油に沈める操作の「順番」を変えるだけで、水滴の性質が「付着する」と「弾かれる」の二つの状態に分岐することが分かりました(図(a))。さらに、外部刺激によって付着状態から弾かれ状態に切り替え可能であることも示しました(図(b))。
図: (a) 同一平坦基板上において、弾かれ・付着状態の水滴が同時に観察されている。弾かれ状態は、基板を油に沈めた後に水滴を接触させた状態。付着状態は水滴を接触させた後に油に沈めることで形成できる。
(b) 外部刺激による付着状態から弾かれ状態への切り替え。付着状態の水滴に対してテフロン針を用いて基板並行方向に応力を加えることで弾かれ状態に切り替えることができる。
将来展望
提案した設計原理は新たな「濡れ性制御手法」として、機能性表面の開発に貢献できると考えます。液体を弾く状態を、本来液体が付着する組み合わせでも作れるということは、環境影響が懸念されるPFAS(有機フッ素化合物)のような撥水性の高い材質に頼らずとも、撥水撥油性表面を形成できる可能性があるということです。また、本研究で用いた平坦な表面は、従来の微細凹凸構造に比べて機械耐久性が格段に高いため、傷がつきやすい環境下でも長期間性能を維持できる、新しい機能性表面の設計につながります。そして設計条件を満たすことができれば、特別な表面構造を形成しなくても平坦表面にただ油を垂らすだけで液体を弾く表面を形成できる可能性があります。さらに分岐可能条件においては、単に液体を弾く・付着させるにとどまらない、濡れ状態を切り替え可能なスマート表面としてマイクロ流体の操作プラットフォームとしての応用が期待できます。
その他
掲載論文
題目 : Bistable Wetting States on a Smooth Surface
著者 : Mizuki Tenjimbayashi, Shunto Arai
雑誌 : Advanced Materials Interfaces
DOI : 10.1002/admi.70495
掲載日時 : 2026年4月2日
著者 : Mizuki Tenjimbayashi, Shunto Arai
雑誌 : Advanced Materials Interfaces
DOI : 10.1002/admi.70495
掲載日時 : 2026年4月2日
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研究内容について
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〒305-0047 茨城県つくば市千現 1-2-1
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