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レアアース量の少ないSm(Fe0.8Co0.2)12化合物の磁石化の可能性を実証

- ネオジム磁石を超える磁石特性のデモ -

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)
東北学院大学

NIMSは東北学院大学と共同で、希土類元素の含有量が少ないSm(Fe0.8Co0.2)12というサマリウム鉄コバルト化合物にホウ素を添加した薄膜で、自動車用モーターなどの産業応用に十分な1.2テスラという高い保磁力を実現することに成功しました。

概要

  1. NIMSは東北学院大学と共同で、希土類元素の含有量が少ないSm(Fe0.8Co0.2)12というサマリウム鉄コバルト化合物にホウ素を添加した薄膜で、自動車用モーターなどの産業応用に十分な1.2テスラという高い保磁力を実現することに成功しました。厚さ約3 nmのアモルファス相がSm(Fe0.8Co0.2)12粒子を均一に覆うユニークな複相ナノ構造により実現しました。薄膜によるモデル実験ですが、図1に示すようにサマリウム鉄系磁石がネオジム磁石を超えるポテンシャルを実証しました。
  2. CO2の排出削減にむけてグリーンテクノロジーの需要が拡大し、自動車用モーターや風力発電などに使われる高性能永久磁石の使用量が急激に増加しています。現在使われているネオジム磁石はネオジムだけでなくジスプロシウムといった希土類元素(レアアース)が使われていますが、原料の地政学的リスクが高いため、その使用に頼らない磁石の開発が求められています。そのような磁石の候補としてレアアース比の低いSmFe12化合物の磁石化が試みられてきました。2017年にNIMSではSm(Fe0.8Co0.2)12化合物の磁気物性値である磁化・結晶磁気異方性・キュリー温度がネオジム磁石を凌ぐことを確認しましたが、磁石応用のために必要な特性である「保磁力」については、期待されるような高い値は得られていませんでした。
  3. そこで本研究グループは、高性能ネオジム磁石では、一方向に配列したミクロのNd2Fe14B結晶を約3 nmの厚さのアモルファス相が覆う複相構造により高い保磁力が得られることを参考に、Sm(Fe0.8Co0.2)12化合物においても結晶粒界に第2相が薄く均一に形成する微細組織の開発を目指しました。今回の研究では、Sm(Fe0.8Co0.2)12にホウ素を添加することにより、Sm(Fe0.8Co0.2)12ナノ粒子を3 nmの厚みのアモルファス相が均一に覆う複相組織を実現しました。その結果、従来よりも1.4倍高い1.2 テスラという高保磁力が得られました。また結晶方位が一方向に配列した異方性構造を持っているため、従来の等方性材料より高い磁化も同時に実現できました。
  4. 本研究は薄膜を使ったモデル実験ですが、Sm(Fe0.8Co0.2)12の異方性複相構造で高保磁力が得られることが実証されたことで、Sm(Fe0.8Co0.2)12化合物がネオジム磁石を超える新規磁石となる可能性が示されました。これまで異方性Sm(Fe0.8Co0.2)12は十分な保磁力が出せませんでしたが、本研究で確立した保磁力発現機構をバルク磁石に応用することにより、実用的な異方性Sm(Fe0.8Co0.2)12磁石の開発に繋がることが期待されます。
  5. 本研究は、国立研究開発法人物質・材料研究機構のH. Sepheri-Amin主幹研究員らと東北学院大学の嶋敏之教授らのグループによって、文部科学省委託事業「元素戦略磁性材料研究拠点」において行われました。本研究成果は、Acta Materialia誌にて2020年6月12日にオンライン掲載される予定です。

残留磁化と保磁力の関係の図

プレスリリースの図1 : 残留磁化と保磁力の関係。目指す磁石性能は高い保磁力と高い残留磁化を満たす右上の部分です。本研究ではこれまでのSmFe12系磁石よりもはるかに高い特性を、ネオジム磁石よりも若干高い特性を示しています。



特記 (掲載論文)

題目 : Achievement of High Coercivity in Sm(Fe0.8Co0.2)12 Anisotropic Magnetic Thin Film by Boron Doping
著者H. Sepehri-Amin, Y. Tamazawa, M. Kambayashi, G. Saito, Y.K. Takahashi, D. Ogawa, T. Ohkubo, S. Hirosawa, M. Doi, T. Shima, and K. Hono
雑誌 : Acta Materialia (2020)
DOI : 10.1016/j.actamat.2020.05.026(別ウィンドウで開きます)


本件に関するお問合せ先

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
磁性・スピントロニクス材料研究拠点
高橋 有紀子 (たかはし ゆきこ)
TEL: 029-859-2718
E-Mail: takahashi.yukiko=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
東北学院大学
工学部 教授
嶋 敏之 (しま としゆき)
TEL: 022-368-1128
E-Mail: shima=mail.tohoku-gakuin.ac.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道・広報に関すること)

国立研究開発法人物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
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FAX: 029-859-2017
E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
学校法人東北学院
法人事務局 広報部広報課
〒980-8511
宮城県仙台市青葉区土樋1-3-1
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E-Mail: koho=mail.tohoku-gakuin.ac.jp
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