令和5年度文部科学大臣表彰をNIMS職員8名が受賞
2023.05.11
令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、NIMS職員8名が受賞しました。
今年度の受賞者は、以下の8名です。
【若手科学者賞】久保田圭、セペリ アミン ホセイン、田村亮、原田尚之
若手科学者賞 : 4名
萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象に贈られる賞です。
受賞者
【業績名】
蓄電池の高性能化を実現する合成戦略に基づく新物質開拓研究
リチウムイオン電池をはじめとする蓄電池の大幅な性能向上には、その基幹材料となる正極および負極材料の抜本的な材料改革が必要とされています。すなわち、既存材料の改良を前提とする材料設計から脱却した、新奇な高性能材料の物質開拓が求められています。
受賞者は、既存材料から充放電反応の本質を捉えて高性能化因子を抽出し、緻密な材料設計とそれを実現する合成手法の新規導入によって、高容量を示す新奇なリチウム・ナトリウム・カリウムイオン電池用正極・負極材料の創製に至りました。
本研究成果は、リチウムイオン電池及びナトリウム・カリウムイオン電池といった次世代蓄電池の研究開発を発展・加速させるものであり、カーボンニュートラル社会の実現に貢献できると期待されます。
受賞者
【業績名】
希少元素を用いない新規高性能永久磁石材料の研究
近年の国際的なサプライチェーンの問題に加え、資源的な持続性の観点からも、希少元素を用いないネオジム磁石、さらにはバランス良く希土類元素を活用できる新たな磁石材料の開発が急務となっています。
受賞者は、Nd-Fe-B系焼結磁石の保磁力の起源の解明及びDyなどの希少金属を使わずに高保磁力を達成できるNd-Fe-B系磁石の開発、さらにNdの使用量を削減しつつ優れた磁石特性を発現できる次世代永久磁石材料に関する研究で世界的に注目される業績を挙げてきました。
本研究成果は学界のみならず、日欧中における磁石産業界での高保磁力磁石開発に明確な指針を与えてきており、今後も資源的なリスクが少なく、高温特性に優れた次世代の高性能省希土類永久磁石の開発に新たな道を開くことが期待されます。
受賞者
【業績名】
機械学習と統計力学的手法による材料データ解析に関する研究
マテリアルズ・インフォマティクス研究を成功に導くには、物質・材料科学のニーズに合わせた適切なデータ科学手法を考案・適用することが重要になります。
受賞者は、材料データにある物理的背景を理解・活用できるデータ科学手法を、アカデミック・産業界における共同研究を通じ、物質・材料研究の様々なニーズに則して開発しました。その際、機械学習は「予測」に強く、統計力学的手法は「理解」に強いため、それらの手法を適切に使い分け、あるいは組み合わせることで、設計指針の構築だけでなく材料理解の促進にも貢献できる手法を目指しました。開発手法を利用し、実験・測定データに対する数々の応用研究を成功に導きました。
本研究成果は、ものづくり産業に直結しており、アカデミック・産業界のマテリアルズ・インフォマティクス研究を加速し、多くの実用材料が創出される基盤技術に繋がると期待されます。
受賞者
【業績名】
層状酸化物の表面分極を利用したヘテロ構造デバイスの研究
異なる結晶を積層したヘテロ構造は単一の結晶に無い機能を示し、電子デバイスをはじめ様々な用途に用いられるため、新機能などブレークスルーを生むには新しい結晶の組み合わせを見つけることが重要です。
受賞者は、薄膜エピタキシー技術を利用して結晶界面の構造と電子状態を制御して、特異な物性や機能を持つ新しいヘテロ構造を探索しており、当該業績において、受賞者は層状結晶の大きな表面分極を利用したヘテロ構造を独自に提案し、大幅なデバイス特性向上と電子相制御を実現しました。
特に、大きな表面分極と異方的な電気伝導性を備える金属性デラフォサイトに着眼し、パワー半導体とのヘテロ構造による高温動作ダイオード、特異な表面磁性状態、透明導電性など、新しい現象や機能を見出しました。本研究成果は次世代の電子デバイスへ応用が期待されます。
創意工夫功労者賞 : 2名
優れた創意工夫により職域における技術の改善向上に貢献した者を対象に贈られる賞です。
受賞者
【業績名】
3次元アトムプローブ試料自動作製システムの考案
受賞者
【業績名】
EBSD解析可能な試料表面の作製方法改善
研究支援賞 : 2名
高度で専門的な技術的貢献を通じて研究開発の推進に寄与する活動を行い、顕著な功績があった者を対象に贈られる賞です。
受賞者
【業績名】
大型精密鍛造試験における基盤技術確立と設備共用による貢献
高い品質が求められる航空機エンジンの部材には,高強度合金や高耐熱合金の鍛造品が使われており、欧米中では先進的な鍛造材の研究開発が行われています。2014年開始の戦略的イノベーション創造プログラムにおいて、我が国の航空機エンジン部材の競争力を強化するため革新的な機能をもつ大型精密鍛造試験機が設計・開発されました。
本業績では、物質・材料研究機構に導入された世界に類を見ない大型精密鍛造試験機において、鍛造中の被鍛造材および金型の温度制御を始め様々な技術開発を行い、大型試験機による高度な恒温鍛造を実現し、超耐熱合金の研究支援を行いました。さらに大型精密鍛造試験機の共用化を行い、確立した恒温鍛造技術で国内の大学や企業等の材料開発に貢献しました。
本業績の支援を受け、同一試験材から組織や力学特性を評価するための試験片採取が可能となり、塑性加工・材料データベースおよびモデリング技術が高度化されました。さらにひずみ制御と回転ねじりを組み合わせた革新的な鍛造プロセスの開発や難加工材のディスク成型にも成功し、我が国の航空機エンジン部材の材料開発が進展しました。
本業績の支援を受けて行われた塑性加工・材料データベースおよびモデリング技術の構築に関する研究成果は、マテリアルデータを活用したモノづくりの進展に貢献し、製品開発の期間短縮やコスト低減が見込まれます。
関連ファイル・リンク
- エネルギー・環境材料研究センター(GREEN)
- 磁性・スピントロニクス材料研究センター
- マテリアル基盤研究センター
- ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)
- 技術開発・共用部門