第103号

1. 最新研究ニュース
   『“ハエの脚”で着脱らくらく ! 　作り方もシンプルな新・接着材料』
   『“タラ”で再生医療を低価格化 ! 　血管形成を促進させるゲルを開発』
2. データ利活用が新ステージへ ! 材料データリポジトリ「MDR」を開設
3. NIMS NOW最新号

壁を垂直にも逆さにも歩くことができるハエ。そのあし裏は、強い接着力と簡単に着脱できる機能をあわせ持っています。この機能が再現できれば、ロボットが自由自在に壁をあるいたり・・・も夢ではありません。

そこでNIMSは、ハエのあし裏を詳細に観察。「ヘラ」のような形をまねることで、強力な接着力をもちつつ簡単にはがせる接着材料を実現しました。作り方もナイロン繊維を溶液に漬けて固めるだけと非常にシンプル。実はこの作り方も、ハエの脚にヒントがありました。

作り方までハエそっくりな材料。その驚くべき接着力とは??

機能の失われた臓器などを再生する「再生医療」。移植した細胞や組織が患部に定着するには、新たな血管が形成され、酸素や栄養が十分に供給されなければなりません。しかし血管形成を促す薬剤は、わずか0.1mg程度で5万円以上と極めて高価。この価格が医療費削減の壁となっています。

NIMSは、かまぼこ工場で廃棄される“タラの皮”から抽出したゼラチンを使って、血管形成を促進する材料の開発に成功しました。タラゼラチンで血管が新たにできた理由。カギは、ゼラチンに化学修飾をして生体内であえて炎症を起こすようにしたことにあります。

再生医療の低価格化をもたらす期待の新材料。
なぜ炎症なのか?ヒトの免疫反応をうまく利用した仕組みはこちらから↓↓

AIを活用した材料開発が進む中、クローズアップされるのがデータの重要性。短時間に高性能な材料を開発するためは、質の高いデータが大量に必要です。一方、論文として公開されるデータは、グラフや平均値のみであったり、雑誌ごとに体裁が異なったりと、AIでの利用には制限があります。

そこでNIMSは、研究データをAIが使いやすい形で蓄積・公開するための新たなサービス「材料データリポジトリ (MDR) 」を開始しました。NIMS研究者が取得した材料の特性データや画像データなどを収録。中には論文化されていないデータも含まれます。ユーザーは、これらの情報を、試料や装置などのキーワードから検索し、自由に閲覧・ダウンロードすることができます。

ユーザー登録不要で利用料も無料。
今後データ登録を推進し、さらなるサービスの充実をはかっていきます。

登録方法や利用規則などはこちらから。

次号のキーワードは、状態を表す言葉「オノマトペ」。

登場するのは「すかすか」とか「じわじわ」とか「とろーり」とか一見すると、なんだかゆるくて、どことなく頼りなさそうな言葉たち。でもそこに、未来を変える最先端材料の本質を読み解くカギが隠れています。

たとえば、開発中のがん治療用シート。副作用を抑えるため、薬が“じわじわ”と放出されるよう、シートの構造が絶妙に設計されています。さらに驚異的な断熱性能を発揮するエアロゲル。その秘密は、中身が“すかすか”で、空気をたっぷり含んでいること。

身近な言葉「オノマトペ」を使って、材料開発の最前線にズバッと切りこむ最新号。ぜひお楽しみに !

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