貼って剥がすだけ!画期的な周期微細構造の転写技術を開発

NIMS(国立研究開発法人物質・材料研究機構)

NIMSとコネティカット大学の研究者からなるチームは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)という汎用材料の表面に形成したナノ/マイクロメートルスケールの周期構造(周期微細構造)を、ガラス基板に簡単に転写できる手法を開発しました。

概要

  1.  NIMSとコネティカット大学の研究者からなるチームは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)という汎用材料の表面に形成したナノ/マイクロメートルスケールの周期構造(周期微細構造)を、ガラス基板に簡単に転写できる手法を開発しました。この手法により、撥水性や構造発色といった機能性を持つ材料を容易に作製でき、従来の高価な装置や複雑なプロセスが不要になります。これにより、高機能な結露防止素材や発色を利用したガスセンサへの応用が期待され、技術革新の可能性が広がります。
  2. 周期微細構造は、その構造に応じて多様な機能が発現するため、長年注目されてきましたが、従来の作製方法では高価で大型の装置や長時間の処理が必要であり、大面積への適用も困難でした。印刷による作製も可能ですが、周期微細構造を形成するための「インク」の種類や補充が課題となっていました。以上より、これらの課題を克服し、上記構造を簡便に作製できる手法の開発が望まれていました。
  3.  今回、研究チームは、固体PDMS表面にひだ状の周期微細構造を形成し、ガラス基板に貼って剥がすだけで構造転写する技術を開発しました。本手法では、上記PDMS内部に意図的に残存させた液体PDMSが滲み出すことでインクとして機能し、繰り返し転写が可能です。ひだ状以外にも、柱状や波状などの様々な構造が作製可能で、シリコーンオイルやシリカナノ粒子などを含む構造も転写できます。これにより、用途に応じた特性を持つ周期微細構造を設計することが可能です。
  4. 今後は、結露防止素材や発色を利用したガスセンサに加え、超撥水・超撥油表面や水捕集など社会的ニーズの高い応用を目指します。まずは、転写可能な周期微細構造のバリエーションを増やすため、実験条件の最適化に取り組む予定です。
  5. 本研究は、NIMS高分子・バイオ材料研究センターの柴 弘太主幹研究員とコネティカット大学のLuyi Sun教授らによるチームで行われました。
  6. 本研究成果は、2024年8月29日にAdvanced Science誌のオンライン版に掲載されました。

プレスリリースの図 : PDMSを用いた周期微細構造転写の概要 (虹色は周期微細構造に由来する発色)

掲載論文

題目 : Syneresis-Driven Self-Refilling Printing of Geometry/Component-Controlled Nano/Microstructures
著者 : Kota Shiba, Kayoko Saito, Kosuke Minami, Shunto Arai, Genki Yoshikawa, Luyi Sun, Mizuki Tenjimbayashi
雑誌 : Advanced Science
掲載日時 : 2024年8月29日
DOI : 10.1002/advs.202405151

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