オープンサイエンス時代の次世代リポジトリソフト開発に着手

国立情報学研究所が欧州原子核研究機構と共同で/物質・材料研究機構も連携

2017.11.07


大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 (NII) は、10月から欧州原子核研究機構 (CERN) と連携して、大学や研究機関が論文やデータなどを公開するためのプラットフォームとして重要な役割を担っている機関リポジトリの次世代ソフトウェア「WEKO3」の共同開発に着手しました。NIMSは、オープンサイエンス時代に対応する本ソフトウェアの共同開発に研究機関として連携します。

概要

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所 (NII、所長 : 喜連川 優、東京都千代田区) は、10月から欧州原子核研究機構 (CERN、スイス・ジュネーブ) と連携して、大学や研究機関が論文やデータなどを公開するためのプラットフォームとして重要な役割を担っている機関リポジトリの次世代ソフトウェア「WEKO3」の共同開発に着手しました。国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS、理事長 : 橋本和仁、茨城県つくば市) は、オープンサイエンス時代に対応する本ソフトウェアの共同開発に研究機関として連携します。NIIは2018年度以降に実証実験・試験運用を行い、その後、現在の共用リポジトリ「JAIRO Cloud」に搭載して本格運用を開始する予定です。

背景

論文だけでなく研究データやソフトウェアなどもインターネット上などで社会一般に広く公開・共有する「オープンサイエンス」が、新しい研究の進め方として注目されています。オープンサイエンスは、他の研究グループによる研究データを利用できるようにすることで重複した実験などを減らし、研究の効率化と生産性の向上をもたらすとともに、研究成果の質や透明性の確保にも貢献します。さらに、産業界や市民が科学に参加することで社会全体のイノベーションシステムを変革する枠組みとしても期待されています。世界的に研究データを積極的に公開していくことは研究者の責務となりつつあります。
国内でも2015年3月に内閣府が公表したオープンサイエンスに関する報告書で研究データの公開が言及され、内閣府「オープンサイエンス推進に関するフォローアップ検討会」と並行して文部科学省 科学技術・学術審議会 学術分科会 学術情報委員会において学術情報のオープン化の推進について審議が行われました。昨年7月には、日本学術会議が「研究分野を超えた研究データの管理およびオープン化を可能とする研究データ基盤の整備」を提言しています。

NII・NIMSのオープンサイエンスへの取り組み

NIIは大学共同利用機関として日本におけるオープンアクセスの推進に貢献するため、「機関リポジトリ」の構築・運用を支援してきました。機関リポジトリとは、大学や研究機関が主体となって知的生産物の管理や発信を行うためのサービスで、オープンアクセスを推進するための重要な基盤の一つです。日本におけるオープンアクセス活動をより活発化するために、NIIは2008年に機関リポジトリ用のソフトウェア「WEKO」の開発に着手し、オープンソースとして公開してきました。従来のリポジトリソフトウェアでは実現されていなかった直感的な操作性や、機関で必要とされるリポジトリの管理機能を全てウェブから操作できるメンテナンス性の高さを特徴とします。2012年からはWEKOを使用した機関リポジトリのクラウドサービス「JAIRO Cloud」の提供し、現在では国内の500以上の学術機関に利用されています。NIIではこれまで、JAIRO Cloud利用機関からのフィードバックをもとに、WEKOの機能拡張を継続的に進めてきました。システムの研究開発と大規模な利用者が有機的に連携してオープンアクセスを支える活動は国際的にも評価され、2014年3月に米スタンフォード大学図書館による「研究図書館によるイノベーション賞 (Stanford Prize for Innovation in Research Libraries) 」の功労賞 (Commendations of Merit) を受賞しました。本年4月1日には、文献を主体としたオープンアクセスから研究データの公開も含めたオープンサイエンスへの展開を見据え、「オープンサイエンス基盤研究センター (RCOS) 」 (センター長 : NIIコンテンツ科学研究系教授 山地 一禎) を設置し、研究データ基盤の構築を進めています。
NIMSは特定国立研究開発法人として、我が国が強みを有する材料分野におけるイノベーション創出の推進を使命としています。本年4月1日には「統合型材料開発・情報基盤部門 (MaDIS) 」 (部門長 : 長野裕子NIMS理事) を新設し、データ科学、計算科学、理論及び実験を融合させ、物質・材料研究開発のあり方を革新し、研究開発のスピードを大幅に加速させることを目指し、世界最大規模の高機能な材料データプラットフォームの基盤の開発を行っています。知の創出に新たな道を開くオープンサイエンスに対応する材料データプラットフォームは、研究成果の保存・公開にとどまらず、イノベーションに繋がる材料データ基盤となります。
NIIとNIMSは本年6月1日付で、研究成果を適切に保存・管理し、研究データの利活用を高め、イノベーションを可能にするデータプラットフォームを共に構築することを目指して、連携・協力の推進に関する覚書を締結しました。NII、NIMS両機関はRCOSとMaDISにおいて、先端的なデータプラットフォームの構築に必要な技術の研究開発や運用手法の確立に連携・協力して取り組んでいます。

新ソフトウェアの開発

NIIは大学や研究機関の研究のワークフローを多面的にサポートするため、RCOSで「管理」「公開」「検索」という三つのICT基盤の構築と運用に取り組んでいます。この3基盤の中で、機関リポジトリは論文やデータなどの公開のためのプラットフォームとして、なくてはならない役割を担っています。
NIIは、文献のみならず研究データを含む幅広い学術成果の公開プラットフォームとしてWEKOを進化させるため、CERNが開発したオープンソースの汎用リポジトリソフトウェア「Invenio」を基に、オープンサイエンス時代の次世代リポジトリソフトウェア「WEKO3」の開発を開始します。Invenioは、CERNが提供するデータリポジトリ「Zenodo」や欧州の研究データ基盤プロジェクト「EUDAT (European Data Infrastructure) 」の公開基盤「B2SHARE」に利用されているほか、世界中の数多くの学術機関において、学術成果のオープン化を進めるためのプラットフォームとして活用されています。WEKO3ではInvenioをフレームワークとして採用することで、機能の拡張性能や運用性能を飛躍的に向上させると同時に、大規模データにも対応した次世代リポジトリシステムとして生まれ変わります。
今回の新ソフトウェア開発は、NII、NIMSとCERNの国際的な連携開発体制のもとで実施します。開発した成果の一部はInvenioの本体の機能にも反映されることから、世界的なデータリポジトリの開発にも大きな役割を果たします。国内では、オープンアクセスリポジトリ推進協会との連携により、大学や研究機関で必要とされる先端機能の充実化を図ります。国内外の学術機関が国際的に連携して取り組む本開発を通じて、NIIとNIMSは世界のオープンサイエンスの推進に貢献します。

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