1ミクロンの解像度で電子回路を印刷

~フレキシブル基板上で成功 ウェアラブルデバイス等の応用に期待~

2016.05.17


国立研究開発法人 物質・材料研究機構
株式会社コロイダル・インク

NIMS MANAのグループと、株式会社コロイダル・インクからなる研究チームは、NEDO若手研究グラント事業の支援を受け、線幅・線間1ミクロンの解像度で金属配線および薄膜トランジスタ (TFT) を形成する印刷技術を開発しました。

概要

  1. 国立研究開発法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の三成剛生MANA独立研究者のグループと、株式会社コロイダル・インクからなる研究チームは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 若手研究グラント事業の支援を受け、線幅・線間1ミクロンの解像度で金属配線および薄膜トランジスタ (TFT) を形成する印刷技術を開発しました。この手法によってフレキシブル基板上にチャネル長1ミクロンの有機TFT  を形成し、実用レベルの動作を確認しました。
  2. 機能性材料をインクに溶解し、印刷技術を用いて電子素子を作製するプリンテッドエレクトロニクス は、低コスト・大面積の新しい半導体素子形成技術として近年注目を集めています。この技術を使えばフレキシブルな基板にも電子素子を作成できるため、ウェアラブルデバイス等の新しいアプリケーションが可能になると期待されています。しかし、従来の印刷技術では、配線や素子の線幅は数10ミクロン以上であり、実用化レベルの微細な素子を形成することができませんでした。そのため、数ミクロン以下の配線を再現性良く作製できる印刷技術の開発が強く望まれておりました。
  3. 今回、研究チームは、フレキシブル基板上に1ミクロンの金属配線を形成可能な印刷技術を開発し、微細な有機TFTの形成を行いました。印刷技術の原理は、波長200 nm以下の真空紫外平行光 (PVUV) を照射することで表面に微細な親水・疎水性パターンを形成し、金属ナノインク を親水性パターン上へ選択的に塗布するものです。PVUV光源として、ウシオ電機が開発した真空紫外平行光照射ユニットを用いることで、従来の光源と比較して大幅な微細化を行いました。金属ナノインクはコロイダル・インク製の常温導電性インクDryCure-Auを用いることで、素子・配線の形成をすべて常温で行うことにも成功しました。その結果、熱によるフレキシブル基板の歪みが完全に抑制され、ミクロンオーダーの配線の正確な形成と積層が可能になりました。この方法で形成したチャネル長1ミクロンの有機TFTでは、精度の問題から従来は不可能であったゲートオーバーラップ長 の制御も完全に行い、実用レベルの移動度 0.3 cm2 V-1 s-1を達成しました。
  4. 今後、この成果を用いて実際のアプリケーションへの応用を目指していきます。開発したプロセスは生体に近い材料へも適用可能で、医療・バイオエレクトロニクス等の分野への応用も期待されます。
  5. 本研究成果は、Advanced Materials誌オンライン版に平成28年5月17日 (現地時間) に掲載予定です。

「プレスリリースの図1 :  選択的塗布技術による微細配線の形成。(a) 選択的塗布技術の模式図。PVUV照射によって親水化した部分にのみ金属インクを塗布する。(b) 選択的塗布によって形成した線幅5ミクロンの金属配線。(c) 異なる線幅で形成した配線。1ミクロンの線幅も可能。」の画像

プレスリリースの図1 :  選択的塗布技術による微細配線の形成。(a) 選択的塗布技術の模式図。PVUV照射によって親水化した部分にのみ金属インクを塗布する。(b) 選択的塗布によって形成した線幅5ミクロンの金属配線。(c) 異なる線幅で形成した配線。1ミクロンの線幅も可能。



本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点
MANA独立研究者
三成 剛生 (みなり たけお)
TEL: 029-860-4918
E-Mail: MINARI.Takeo=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(金属ナノインクに関すること)

株式会社コロイダル・インク
代表取締役 金原 正幸 (かねはら まさゆき)
TEL: 0866-92-5111
E-Mail: info=cink.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道・広報に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
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E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)