理化学研究所 創発物性科学研究センターのNguyen Duy Khanh特別研究員 (現所属 : 東京大学物性研究所) 、中島多朗研究員 (現所属 : 東京大学物性研究所) 、于秀珍チームリーダーと、東京大学の関真一郎准教授 (JSTさきがけ研究者兼任) 、有馬孝尚教授、十倉好紀卓越教授らの研究グループは、物質・材料研究機構、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所との共同研究を通じて、既知の化合物では過去最小となる直径1.9 nmの磁気スキルミオン (磁性体の中で現れる渦巻き状のスピン構造) を観察することに成功しました。スキルミオンは、幾何学的に保護された安定な粒子としての性質を持つため、次世代の情報担体の候補として盛んに研究が行われています。従来、スキルミオンを生み出すには、対称性の低い結晶構造が必要であると考えられてきましたが、本研究では動き回る電子が媒介する新機構を活用することにより、対称性の高い希土類合金中で過去最小のスキルミオンを実現することに成功しました。今回の発見は、極小サイズのスキルミオンを生み出すための新しい物質設計指針を与えており、超高密度な情報素子への展開に役立つことが期待されます。
本研究成果は 2020年5月18日に英国科学誌「Nature Nanotechnology」に掲載されます。
本研究は、科学技術振興機構 (JST) 戦略的創造研究推進事業さきがけ研究領域「トポロジカル材料科学と革新的機能創出」研究課題「磁気構造と電子構造のトポロジーを利用した巨大創発電磁場の生成と制御」 (No. JPMJPR18L5) 、同戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「量子状態の高度な制御に基づく革新的量子技術基盤の創出」研究課題「ナノスピン構造を用いた電子量子位相制御」 (No. JPMJCR1874) 、日本学術振興会 (JSPS) 科学研究費補助金基盤研究A「磁気構造のトポロジー・対称性に由来した新しいマグノン・熱輸送現象の開拓」 (No. 18H03685) および「電子顕微鏡によるトポロジカルスピン構造とそのダイナミクスの実空間観察」 (No. 19H00660) 、同新学術研究領域「ナノスピン変換科学」 (No. 17H05186) 、同外国人特別研究員プログラム (No. 18F18804) 、フンボルト財団、旭硝子財団、村田学術振興財団の支援を受けて行われました。共鳴X線散乱実験は、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 フォトンファクトリーの研究課題 (2018G570) に基づいて行われました。