理化学研究所 (理研) 放射光科学研究センターNMR研究開発部門超高磁場磁石開発チームの柳澤吉紀チームリーダーと末富佑研修生、物質・材料研究機構機能性材料研究拠点高温超伝導線材グループの西島元主幹研究員、ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社の斉藤一功技術総括部長、科学技術振興機構の前田秀明プログラムマネージャーらの共同研究グループは、高温超電導線材をらせん形状に巻いた超電導磁石において、これまで困難とされてきた30テスラ超の高磁場発生に成功しました。
本研究成果により、創薬や医療への貢献が大きく期待される次世代1.3ギガヘルツ (30.5テスラ相当) 核磁気共鳴 (NMR) 装置の開発に向けた重要な技術要件が満たされ、その実現に近づきました。
今回、共同研究グループは、超電導磁石に内側から高磁場での超電導特性に優れるがコイル化が難しいレアアース (RE) 系高温超電導線材を巻いた内層コイル、高磁場での特性は一歩劣るがコイル化しやすいビスマス (Bi) 系高温超電導線材を巻いた中層コイル、工業製品として確立された金属系低温超電導線材を巻いた外層コイルの3層構造の配置により、磁場の発生効率を最大に高めることで31テスラの高磁場を実現しました。これは、らせん形状に巻いたタイプの超電導磁石としては最高記録です。また、高磁場発生の要となるRE系高温超電導コイルは焼損が生じやすいという課題がありましたが、絶縁のないRE系高温超電導線材をらせん形状にコイルに巻き、層間に銅とポリマーの複合シートを挟み込む新しい製造法を適用することで焼損の防止にも成功しました。
本成果は、2019年9月27日にカナダ・バンクーバーで開催される国際会議『26th International Conference on Magnet Technology』で発表されます。