ダイヤモンド論理回路チップの開発

~過酷環境下に強いダイヤモンド集積回路の開発へ前進~

2017.05.31


国立研究開発法人物質・材料研究機構

NIMSの研究グループは、過酷環境下に強いダイヤモンド集積回路を開発するための第一歩として、2種類の動作モードを持つ金属—酸化物—半導体(MOS)電界効果トランジスタ (FET) を組み合わせたダイヤモンド論理回路チップの開発に世界で初めて成功しました。

概要

  1. 国立研究開発法人物質・材料研究機構 (以下NIMS) 機能性材料研究拠点の劉江偉独立研究者、技術開発・共用部門の小出康夫部門長らの研究グループは、過酷環境下に強いダイヤモンド集積回路を開発するための第一歩として、2種類の動作モードを持つ金属—酸化物—半導体(MOS)電界効果トランジスタ (FET) を組み合わせたダイヤモンド論理回路チップの開発に世界で初めて成功しました。
  2. ダイヤモンドは、高いキャリア移動度、大きな破壊電界および大きな熱伝導率を持つことから、高温、高出力、および高周波で安定に動作する電流スイッチおよび集積回路への応用が期待されています。しかしながら、これまでダイヤモンドMOSFETのしきい値電圧の正負を制御することが難しく、2種の動作モードであるデプレッションモード(以下Dモード)およびエンハンスメントモード(以下Eモード)のMOSFETをそれぞれ同一チップ上に作製することは困難でした。これまでに研究グループが開発した独自のしきい値制御プロセス法を利用することで、これら2種類のMOSFETを同一チップ上に作製できたことが論理回路チップ開発の成功の鍵となりました。
  3. 研究グループは、2012年に光電子分光法により、種々酸化物と水素終端ダイヤモンド界面の電子構造を明らかにしました。2013年には極めて低い漏れ電流密度を持つダイヤモンドMOSキャパシタの開発に成功するとともに、困難であったEモード動作する水素終端ダイヤモンドMOSFETの開発に成功しました。続いて2014年にダイヤモンドMOSFETと抵抗器の組合せでインバータ論理回路チップを試作し、更に2015年にはダイヤモンドMOSFETのDモードとEモードの制御プロセス法を開発するとともにそのメカニズムを明らかにしました。これら一連の研究成果は米国物理学会誌プレスニュースとして紹介されました) 。今回の研究成果はこれらの一連の研究成果が基盤となって達成されました。
  4. ダイヤモンド論理回路チップは、高温、放射線や宇宙線下の過酷環境条件においても安定に動作するデジタル回路等の集積回路への応用が期待されます。
  5. 本研究は文部科学省 科学技術人材育成費補助事業「卓越研究員事業」(代表者:劉江偉)、科学研究費助成事業基盤研究(A)「巨大分極電荷を利用する新機能ダイヤモンド電子デバイスの開発」(代表者:小出康夫)、若手研究(B)「Fabrication of high current output fin-type diamond field-effect transistors」(代表者:劉江偉)の一環として行われ、デバイス作製において文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業NIMS微細加工プラットフォームの支援を得ました。
  6. 本研究成果は、現地時間5月9日に米国IEEE電子デバイス学会「IEEE Electron Device Letters」電子版IEEE Xplore Digital Libraryでプレプリントが発表されました。

「プレスリリースの図1 : 作製されたダイヤモンド論理回路チップの顕微鏡写真」の画像

プレスリリースの図1 : 作製されたダイヤモンド論理回路チップの顕微鏡写真



本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
機能性材料研究拠点
独立研究者
劉 江偉 (りゅう こうい)
TEL : 029-860-4954
FAX : 029-860-4672
E-Mail: liu.jiangwei=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
技術開発・共用部門
部門長
小出 康夫 (こいで やすお)
TEL : 029-859-2270
FAX : 029-859-2100
E-Mail: koide.yasuo=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道・広報に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
TEL: 029-859-2026
FAX: 029-859-2017
E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
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