薄さ2mmのエレクトロクロミック表示デバイス

先端電子顕微鏡を用い、原子列毎に元素分析することに成功

2007.10.25


独立行政法人物質・材料研究機構

MANAの樋口 昌芳 若手独立研究員らは、エレクトロクロミック特性を示す有機/金属ハイブリッドポリマーを用いて、薄さ約2mmのエレクトロクロミック表示デバイスの開発に成功した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (拠点長 : 青野 正和) の樋口 昌芳 若手独立研究員らは、エレクトロクロミック特性を示す有機/金属ハイブリッドポリマーを用いて、薄さ約2mmのエレクトロクロミック表示デバイスの開発に成功した。
  2. 電子ペーパーは、液晶、プラズマ、有機ELディスプレイの次に登場する表示デバイスとして、近年、研究開発が急速に盛んになってきている。従来のディスプレイと異なり、電源を切っても表示が続くため、新聞等の紙媒体の代わりを果たすと期待される。エレクトロクロミック方式は、電子ペーパーの駆動方式の中ではカラー化に最も適した方式として注目されているが、従来の有機エレクトロクロミック材料の低い耐久性や、薄膜デバイス化が困難であることなどから研究開発が遅れていた。
  3. 今回開発したデバイスは、当機構で開発した優れたエレクトロクロミック特性を示す有機/金属ハイブリッドポリマーを用いて薄膜デバイス化を実現したものである。デバイス自体は約2mmであるが、0.75mmのガラスを2枚使用しているために、実際のデバイス駆動部分は0.5mmの薄さしかない。
  4. 用いたポリマーは、金属イオンと有機分子が数珠 (じゅず) つなぎになった新しいタイプの材料であり、従来の有機エレクトロクロミック材料と全く異なる発色機構により、材料劣化のない、高い繰り返し駆動安定性を示すことをこれまでに明らかにしている。しかし本材料を含め、一般にエレクトロクロミック物質は電解質溶液中でのみ駆動するため、固体デバイスは困難であった。今回、本ポリマーを用いた固体デバイス化に挑戦し、用いる固体電解質を工夫することで高速応答性や繰り返し安定性に優れた固体薄膜表示デバイスの開発に成功した。単三電池2個で駆動し、1秒以内での書き込み (発色) と消去 (消色) を安定かつ可逆に繰り返すことができる。また、デバイス作製法も簡便であることから、カラー電子ペーパーの開発に大きなインパクトを与える研究成果である。一方、本表示デバイスは、電子ペーパー以外にも、ポスターや看板への応用や調光ガラス等様々な用途への応用が可能であり、今後広く産業界に波及する技術として期待される。

    本研究成果は、11月1日に東京国際フォーラム (有楽町) で開催されるNIMSフォーラムで発表する予定である。

「プレス資料中の図2: エレクトロクロミック特性。 (左) 初めの着色状態、 (右) 乾電池でエレクトロクロミック物質を酸化した消色状態。乾電池の+と - をつなぎかえることで元の着色状態に戻る。」の画像

プレス資料中の図2: エレクトロクロミック特性。 (左) 初めの着色状態、 (右) 乾電池でエレクトロクロミック物質を酸化した消色状態。乾電池の+と - をつなぎかえることで元の着色状態に戻る。



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