気相成長ダイヤモンド薄膜で超伝導を発見

ダイヤモンド超伝導デバイスへの第一歩

2004.08.04


独立行政法人物質・材料研究機構

NIMSのナノマテリアル研究所 ナノ量子エレクトロニクスグループは、早稲田大学理工学部と共同で気相成長ダイヤモンドにホウ素を大量に添加することにより、超伝導が出現することを世界で初めて発見した。

概要

  1. 独立行政法人物質・材料研究機構 (理事長 : 岸 輝雄) ナノマテリアル研究所 (所長 : 青野 正和) ナノ量子エレクトロニクスグループ (アソシエートディレクター : 羽多野 毅) の高野 義彦 主任研究員らは、早稲田大学理工学部の川原田 洋 教授らと共同で気相成長ダイヤモンドにホウ素を大量に添加することにより、超伝導が出現することを世界で初めて発見した。
  2. 気相成長ダイヤモンドは、比較的簡便な装置でデバイス開発に適した薄膜状のダイヤモンド試料が得られるため、この20年間盛んに研究されている。純粋なダイヤモンドは良質な絶縁体であるが、ホウ素やリンを僅かに添加すると半導体的な性質を示すことが知られている (ホウ素の濃度にして0.0001%程度) 。このダイヤモンド半導体は、現在主流のシリコンなどと比べてバンドギャップが大きいため、次世代の高周波高出力デバイスや紫外線発光素子などの開発が期待されており、現在、世界的に研究が進められている。しかし、高濃度にホウ素を添加した例は少なく、電気化学用電極などとして一部に応用されているに過ぎず、殆ど研究されていなかった。
  3. 今回、ホウ素を炭素に対して2%と非常に高濃度で添加したダイヤモンドを合成したところ、絶対温度約8.7K (摂氏約マイナス264.5度) で超伝導を示すことを発見した。今回の発見により、ダイヤモンド薄膜に超伝導という新しい機能が付加されたことで、発熱の極めて少なく環境に優しい新デバイスの実用化が期待される。
  4. 本研究は、9月に仙台で行われる応用物理学会やイタリアで行われる国際会議Diamond2004にて発表の予定である。

「図1.気相成長ダイヤモンド薄膜の電子顕微鏡写真 表面に三角形に成長した特徴的な結晶粒が見られるが、これは、{111}方向に成長したダイヤモンドである。良好な超伝導状態を得るためには、{111}方向に成長することが望ましい。」の画像

図1.気相成長ダイヤモンド薄膜の電子顕微鏡写真 表面に三角形に成長した特徴的な結晶粒が見られるが、これは、{111}方向に成長したダイヤモンドである。良好な超伝導状態を得るためには、{111}方向に成長することが望ましい。



お問い合わせ先

研究内容に関すること

独立行政法人物質・材料研究機構
ナノマテリアル研究所 ナノ量子エレクトロニクスグループ
主任研究員
高野 義彦 (たかの よしひこ)
TEL: 029-859-2842
E-Mail: TAKANO.Yoshihiko=nims.go.jp
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報道担当

独立行政法人物質・材料研究機構 
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FAX:029-859-2017

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