令和3年度文部科学大臣表彰をNIMS職員が受賞

2021.04.08


令和3年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において、NIMS職員3名が受賞しました。

この表彰は、科学技術に関する研究開発、理解増進などにおいて顕著な成果をおさめた人々の功績をたたえることで、科学技術に携わる人々の意欲向上を図り、日本の科学技術水準の向上に寄与することを目的として文部科学省が定めたものです。
今年度の受賞者は、以下の3名です。

【科学技術賞 (科学技術振興部門) 】木村 一弘
【若手科学者賞】石井 智冨中 悟史

科学技術賞 (科学技術振興部門) : 1名

科学技術の振興に寄与する活動を行った者を対象に贈られる賞です。

受賞者

科学技術賞 (科学技術振興部門部門) 受賞者 : 木村 一弘 木村 一弘 (きむら かずひろ)
構造材料研究拠点 拠点長

【業績名】

クリープ強度評価による発電プラントの信頼性向上への貢献

1980年代以降に開発された高強度の高クロムフェライト耐熱鋼を用いることにより、火力発電プラントの蒸気温度を600℃程度に高めることが可能となり、発電効率は大きく向上しました。しかし、当初の予測よりも高温での長時間使用に伴う強度低下が大きく、設計基準の策定根拠である10万時間域 (約11年半) における長時間クリープ強度の過大評価が懸念されていました。

本活動では、加速試験条件である高応力短時間域と実機使用条件である低応力長時間域では、クリープ強度の支配因子及び材質劣化挙動が異なることを解明するとともに、0.2%耐力の1/2という簡便な指標を用いて2つの領域に分割したクリープ試験データを独立に解析評価することにより、長時間クリープ強度を高精度で予測評価できる「領域分割解析法」を提唱しました。

本活動により、経済産業省原子力安全・保安院の委託により実施されたクリープ強度の再評価に「領域分割解析法」が採用され、その評価結果に基づいて設計基準である「許容引張応力」が見直されるとともに、既設プラントの余寿命診断のための「寿命評価式」が制定され、火力発電プラント等の安全性向上に寄与しています。


若手科学者賞 : 2名

萌芽的な研究、独創的視点に立った研究等、高度な研究開発能力を示す顕著な研究業績をあげた40歳未満の若手研究者を対象に贈られる賞です。

受賞者

若手科学者賞受賞者 : 石井 智 石井 智 (いしい さとし)
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主幹研究員

【業績名】

遷移金属窒化物光励起電荷の機能開拓に関する研究

貴金属ナノ構造への光照射によって光励起電荷を生成し光電変換や光熱変換を行う研究が、近年盛んに行われてきました。しかし、貴金属の希少性と変換効率の低さが課題となっていました。

氏は、従来光学材料としては使われていなかった窒化チタン等の遷移金属窒化物の高いキャリア濃度に注目して研究を進めました。遷移金属窒化物は、化学的に安定で貴金属より資源的に豊富な材料です。その結果、遷移金属窒化物ナノ構造は光励起電荷を生成でき、光電変換や光熱変換の効率が貴金属ナノ構造より1桁以上高いことを計算と実験から明らかにしました。更に、遷移金属窒化物ナノ構造を光触媒や太陽熱蒸留の高効率化に応用できることを実証しました。

本研究成果は、太陽光エネルギーの有効利用、ひいてはカーボンニュートラル社会の実現に貢献すると期待されます。


受賞者

若手科学者賞受賞者 : 冨中 悟史 冨中 悟史 (とみなか さとし)
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 主幹研究員

【業績名】

ナノマテリアルの未知構造解析に関する研究

髪の毛の太さの千分の一以下の極めて小さな素材であるナノマテリアルは、合成や機能開拓がこの20~30年間で盛んに行われましたが、その機能の本質的理解には、精密に原子配置を知る必要があるものの、構造が未知なナノマテリアルの解析は困難でした。

氏は、ナノマテリアルの原子配置の解析法を研究し、従来の回折法の限界に縛られない二体分布関数と独自のアルゴリズムを用いることで、原子配置が不明なナノマテリアルの構造を解き明かすことができると着眼し、燃料電池触媒やナノシート材料の原子配置を解き明かし、特異な機能の起源を理解することに成功しました。

本研究成果は、新たな触媒材料の開発などを通じて、高性能な電池や燃料電池の開発に繋がる基盤的技術となり、持続可能な低炭素社会の実現へ貢献すると期待されます。


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