木村 一弘 (きむら かずひろ)
構造材料研究拠点 拠点長
【業績名】
クリープ強度評価による発電プラントの信頼性向上への貢献
1980年代以降に開発された高強度の高クロムフェライト耐熱鋼を用いることにより、火力発電プラントの蒸気温度を600℃程度に高めることが可能となり、発電効率は大きく向上しました。しかし、当初の予測よりも高温での長時間使用に伴う強度低下が大きく、設計基準の策定根拠である10万時間域 (約11年半) における長時間クリープ強度の過大評価が懸念されていました。
本活動では、加速試験条件である高応力短時間域と実機使用条件である低応力長時間域では、クリープ強度の支配因子及び材質劣化挙動が異なることを解明するとともに、0.2%耐力の1/2という簡便な指標を用いて2つの領域に分割したクリープ試験データを独立に解析評価することにより、長時間クリープ強度を高精度で予測評価できる「領域分割解析法」を提唱しました。
本活動により、経済産業省原子力安全・保安院の委託により実施されたクリープ強度の再評価に「領域分割解析法」が採用され、その評価結果に基づいて設計基準である「許容引張応力」が見直されるとともに、既設プラントの余寿命診断のための「寿命評価式」が制定され、火力発電プラント等の安全性向上に寄与しています。