NIMS一般公開2025 開催報告

NIMSは、2025年5月25日(日)に「NIMS一般公開2025」を開催し、「『材料で、世界を変える』研究所 大公開」をテーマに、千現、並木、桜の全地区(茨城県つくば市)を同時公開しました。今年は、NIMS史上最大規模となる84ラボを公開。解説付きのラボツアーや、レアな装置を実際に操作できる研究者体験、朝日賞受賞・紫綬褒章受章の研究者による特別講演会のほか、金属3Dプリンターをテーマにした特別講演会も行いました。さらに、研究職や研究所での仕事に興味のある来場者向けにNIMS連携大学院や若手国際研究センター(ICYS)の紹介、職員採用説明会を開催しました。各ラボでは、来場者が熱心に耳を傾け、研究者と直接対話できる機会を存分に楽しんでいる様子が見られました。来場者からは、「1日では見尽くせない。とても楽しかった」、「専門知識がなくても楽しめ、科学の面白さや興味深さを再発見できた」、「材料の耐久性の向上や評価のためにあらゆる角度からの研究・実験が行われていることを興味深く感じた」、「日本国内だけでなく世界で活躍しているNIMSで働きたい」など、多くの感想が寄せられました。当日はつくば市内だけでなく、新幹線やレンタカーを利用してこの日のために遠方から来場した高校生や大学生など、県内外から3,357名が来場し賑わいを見せました。
 
NIMS openhouse2025 ラボ公開・ツアーの様子

朝日賞受賞・紫綬褒章受章記念 特別講演会「世界の最先端研究を支える“クリスタル”」

ノーベル賞受賞者をはじめ、世界中の名だたる研究機関からオファーが相次ぐNIMSの高純度hBN結晶。小さいながら、今、世界の注目を集めている物質です。NIMSの3万トンプレス機を用いた高圧合成技術で生まれたこの“クリスタル”の開発秘話を、谷口 尚(ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)センター長、NIMS理事)が語りました。約170名が聴講し、多くの感想が寄せられました。その一部をご紹介します。

高校生:「さまざまな物事を学び、探究をしていき、このような話にもっとついていけるようになりたい」

大学生:「人工ダイヤモンドや窒化ホウ素に磁場検出の力があることが面白かった。不純物の除去が課題になっていることが興味深かった」、「自分も研究者になりたい」

社会人:「hBNやダイヤモンドの量子デバイス応用に将来性を感じた」

谷口 尚(MANAセンター長、理事)による講演の様子

特別講演会「ものづくりに革新をもたらす金属3Dプリンター」

金属粉末にレーザーをあて、部分的に溶融・結合させた層を積み重ねることで、複雑な形状の部材をつくることができる金属3Dプリンター。今、大きな注目を集めているこの技術を上手く使えば、高温に長時間耐える強い材料をつくることもできます。NIMSの畠山 友孝(構造材料研究センター 主任研究員)が、基礎から最先端研究、高温に耐える強い材料の特徴まで分かりやすく語りました。約200名の聴講者が集まった会場は立見が出るほど賑わい、多くの感想が寄せられました。その一部をご紹介します。

大学生:「難しい話題をかみ砕いて、大変分かりやすく説明いただいて面白かった」「近年の大学入試でも、温度による鉄の組成変化(面心↔体心)が問われることが多かったのだが、今日の講演で理解が深まった」

ポスドク・研究生:「共同研究がしたいです」

大学院生:「冷却速度を応用することで、耐熱性を高めるのが意外でした」、「専門知識がなくても楽しめた」

社会人:「鋳造や接合などの技術説明が分かりやすかった」

畠山 友孝(構造材料研究センター 材料評価分野 クリープ特性グループ 主任研究員)による講演の様子

80を超えるラボ公開

今年は、新エネルギー研究を支える「水素環境材料実験棟」を桜地区で初公開するとともに、巨大装置「1500トン鍛造シミュレータ」や「超高圧3万トンプレス機」なども公開。来場者が熱心に耳を傾け、研究者と直接対話できる機会を存分に楽しんでいる様子が見られました。その他、予約制プログラムを22種類準備し、とくに高校生から大学院生が集中して研究に触れられる枠を充実させました。来場者からは、普段は見ることができない最先端の研究現場を間近に体験でき、研究者との対話を通じて材料科学の奥深さや面白さを実感できたという感想が多数寄せられました。その一部をご紹介します。

高校生:「『磁石が熱で電気を生み出す!』の温度差でLEDライトが強く光るのが面白かったです。(千現1-8)」「液滴自体に超撥水コーティングをするとスライムみたいな性質を持つのが面白いと思いました。また、その中で培養ができるというのも面白かったです。(並木16-5)」

大学生:「『量子コンピュータの材料開発』では、材料の視点からコンピュータを見るのが面白かったです。冷やす装置が大きくてビックリしました(並木4-1)」、「スマートポリマーの医療への応用や、細胞を水の粒に入れて輸送する技術など、物質の分野から医療に貢献する技術が興味深かったです(並木21-10)」

大学院生:「インゴットの鍛造を見学して、エンジニアの方のプロフェッショナルな仕事の現場を知ることができました。非常に勉強になりました(千現5-2)」

社会人:「クリープ実験の機械がたくさん整列されていて圧巻だった。40年耐えた金属試験片に関する観測記録が残っていること自体が驚異的で、大きな衝撃を受けました(千現14-2)」、「(高校生の)息子と人類最大の未利用エネルギーが何か想像しながら伺いました。想像以上の内容で、しかもスタッフの皆さんが熱心に説明してくださいました(並木16-2)」

並木地区・ラボ公開20-1「超高圧合成3万トンプレスの紹介」
遊佐 斉(ナノアーキテクトニクス材料研究センター ナノ材料分野 超高圧構造制御グループ グループリーダー)が解説している様子

千現地区・ラボ公開14-2「『未来技術遺産』に登録されたクリープ試験技術」
澤田 浩太(構造材料研究センター 材料評価分野 クリープ特性グループ グループリーダー)が解説している様子

並木地区・ラボ公開4-1「量子コンピュータの材料開発」
岩崎 拓哉(ナノアーキテクトニクス材料研究センター 独立研究者)が解説している様子

千現地区・ラボ公開1-8「磁石が熱で電気を生み出す!」
内田 健一(磁性・スピントロニクス材料研究センター 上席グループリーダー)と平井 孝昌(同 主任研究員)が温度差発電について解説する様子

研究者体験コース

薄膜プロセスと微細加工技術を用いた「磁性薄膜デバイス作製体験」や、電気化学的手法による「耐食金属材料・チタンのカラーリング体験」、単分子を超高真空下でプローブ顕微鏡を用いて動かす分子操作を体験できる「極小マシンの大冒険!ナノカーレースに挑戦」、透過型電子顕微鏡の操作や元素分析も行う「TEMを体験」の4コースを実施し、計33名が参加しました。何年も前からNIMSに来たかったという関西エリアの学生など、熱心な参加者も多く、その他にも以下のような感想が寄せられました。
  
高校生:「磁性薄膜デバイスは、内容が難しかったが面白い実験だと感じた」
 
大学生:「電子顕微鏡を実際に見て、仕組みの概要を知ることができて興味深かったです」

研究者体験コース4「TEMを体験」
上杉 文彦(技術開発・共用部門 主幹エンジニア)が解説している様子

ガイド付きラボツアー

今年は原子(Atom)・壊れる(Break)・炭素(Carbon)がテーマの‘ABC’の3種のツアーを合計5回実施しました。当日抽選式で、回によっては倍率が6倍を超えるほど大変な盛況ぶりでした。ツアー中には、小中学生が熱心にメモを取る姿も見られ、参加者の高い関心がうかがえました。ツアーに参加された方からの感想をいくつかご紹介します。
 
小中学生:「ダイヤモンドは宝石だけではない、ということが分かった。」、「“量子コンピューター”など、ニュースで聞く言葉の意味が分かった。」
 
高校生:「内容の濃い学びになった」
 
社会人:「屋外でのサビ試験など、企業では加速試験で行うところを実時間でやれる環境はとても重要だと思った」、「ツアーBが印象に残っています。材料の耐久性の向上や評価のためにあらゆる角度からの研究・実験が行われていることが興味深く感じました。また、それらの研究が航空機やインフラに応用されていることから、研究の社会貢献度の高さを感じました」 

“材料は壊れる”ツアーB | 公開ラボ10-1「極低温/水素環境下での材料特性評価」
打越 哲郎(国際・広報部門 広報室 調査役)が案内している様子

NIMS連携大学院等説明会

NIMS連携大学院制度やインターンシップ制度について情報提供を行いました。さらに、連携大学院生による研究生活や研究の紹介に加え、卒業生である東京エレクトロンテクノロジーソリューションズ株式会社の後藤一希氏をお招きし、「OBトーク」を実施しました。進学先を検討している学生は、OBからの「自分がやり切れるか、将来の不安はいったん考えない。熱意をもって取り組めば」という言葉に背中を押された様子がうかがえるなど、説明会は参加者にとって大いに参考となる機会となりました。

後藤 一希氏(NIMS連携大学院卒業生)によるOBトークの様子

若手国際研究センター(ICYS)の紹介

ICYSリサーチフェロー全員(21名)の研究を一挙に公開し、それぞれが独自のアイデアでどのように材料研究に取り組んでいるのかを紹介しました。また、ポスターに隠されたキーワードを探すイベントを通して、参加者がICYSリサーチフェローたちと活発に意見交換する様子も随所で見られました。

ICYSリサーチフェローが研究紹介している様子

職員採用説明会

NIMSで働く研究職・エンジニア職・事務職の3職種を紹介する説明会を開催し、合計62名の参加がありました。参加者からは、「日本国内だけでなく世界を舞台に活躍できるNIMSで働きたい」、「働いている方が、それぞれ自分の仕事に誇りを持っているところに魅力を感じた」などの感想が寄せられ、説明会終了後も質問が絶えませんでした。

職員採用説明会の様子

クイズ ! まてりある

「物質」や「材料」に関するクイズに挑戦しながら、そのユニークな性質や活用例などを学べるクイズラリーを実施しました。参加した親子連れからは「悪魔の銅って聞いたことある!」といった声が、大学生からは「簡単なものから難しいものまであって、楽しみながら回ることができた」などの感想が寄せられ、世代を問わず多くの方にご好評をいただきました。

物質や材料にまつわるクイズを3地区10か所に掲示 ※画像は一例です

オリジナルグッズ

NIMSの研究で得られた画像を用いた特別なグッズを2種、用意しました。
 
1つ目は、NIMSの研究をテーマにした「NIMS研究紹介かるた」のポストカードです。今年、新たに10種追加し、受付や講演会会場で配布しました。今年の一般公開ポスターのモチーフになった写真をはじめ、特別講演会のテーマに関連したものなど、希少かつ美しい画像を通して、研究内容やその魅力を楽しく学べるアイテムです。
 
2つ目は、NIMSを代表する研究装置、「クリープ試験機」のデザインが施されたクリアファイルです。昨年、クリープデータシート事業が未来技術遺産(重要科学技術史資料)に認定されたことを受け、新たに制作。参加アンケートと引き換えに、参加者に配布しました。白い紙を入れると昭和48年当時の設計図面が浮かび上がります。

研究紹介かるた ポストカード

クリープ試験機 クリアファイル

関連ファイル・リンク

お問い合わせ先

国際・広報部門 広報室
TEL: 029-859-2026
E-Mail: openhouse=nims.go.jp ([ = ] を [ @ ] にしてください)