NIMSクリープデータシート事業に関わる3件が「未来技術遺産」に登録

NIMSが1966年より継続しているクリープデータシート事業に関わる3件の資料「①日本鉄鋼協会「クリープ委員会」議事録及び関連資料」「②クリープ試験機及び設計図面類」「③クリープデータシートとその記録類、クリープ破断試験片」が、国立科学博物館により、令和6年度の「重要科学技術資料(愛称:未来技術遺産)」に選定されました。

写真左より①第1回クリープ委員会議事録、②クリープ試験機設計図面、③クリープ破断試験片

①日本鉄鋼協会「クリープ委員会」議事録及び関連資料

本資料はNIMSクリープデータシート事業で実施している耐熱金属材料の長時間クリープ試験計画の礎です。1964年に科学技術庁資源調査会から出された超臨界圧火力発電の開発に関する勧告で、経済的な耐熱金属材料の開発が必要とされました。しかし、当時は国産耐熱金属材料の信頼できる長時間クリープデータは乏しかったため、同データを取得するために、日本鉄鋼協会にクリープ委員会が設置されました。同委員会において産官学の一線の研究者・技術者が結集することで、クリープデータシート作成作業方案が確立された経緯を示す極めて貴重な資料です。

②クリープ試験機及び設計図面類

これらは、数十年を越える長時間クリープ試験を支える試験技術です。1960年代に金属材料技術研究所(現 物質・材料研究機構)においてクリープ試験機の設計が行われ、その設計図面が保管されています。現在も稼働する500台のクリープ試験機の本体フレームは当初のもので、電気炉や温度調節器などは最新の物にリプレースして、40年を超える世界最長クリープ試験を行うなど、長時間クリープデータの取得を支え続けています。

③クリープデータシートとその記録類、クリープ破断試験片

本資料は、長時間クリープ試験データとその品質を担保する記録類です。1966年以降、長時間クリープ試験で得られたデータを随時とりまとめ、NIMSクリープデータシートとして発刊し続けています。これらは高温構造物の設計応力や材料選択のための基準参照データとして産業界において広く利用されています。各試験データの品質を担保するものとして、試験前後の試験片の寸法測定結果、使用した熱電対の識別番号、数十年の試験中に生じた事象(停電、地震など)他がすべて記録された記録類が保管されています。また、約12,000本のクリープ破断試験片は、刻印による識別が可能な状態で保管されており、材料の劣化状況を把握するための金属組織観察に活用されています。


2024年9月10日、登録証授与式が国立科学博物館にて行われ、篠田 謙一 国立科学博物館館長より、NIMS 宝野 和博 理事長、木村 一弘 特命研究員、澤田 浩太 グループリーダーに登録証が手渡されました。

篠田 謙一 国立科学博物館館長(左)とNIMS 宝野 和博 理事長(右)

登録証を授与されたNIMS研究者一同(左から、木村 一弘 特命研究員、宝野 理事長、澤田 浩太 グループリーダー )

クリープ試験とは

高温に加熱された試験片に一定の荷重をかけて、金属材料の時間の経過に伴うクリープ変形量や破断するまでの時間を測定する試験。高温で金属材料に荷重がかかると、時間の経過に伴って徐々に塑性変形が進むクリープ (Creep : 「這う」の意) という現象が起こるため、ボイラやタービンなどの火力発電プラント、石油化学プラントの圧力容器などの大型高温機器に使われる材料でクリープが問題になる。

クリープ試験機群(千現地区)