有機合成化学の発展によって、新しい分子や高分子が生み出され続けています。目的とする分子を合成するには、様々な化学反応を駆使して段階的にアプローチします。原料となる分子の狙った位置に選択的に反応させることにより、複雑な分子構造を構築することができます。しかしながら、現在の有機合成化学の技術をもってしても分子のスケール (数ナノメートル程度) を超えて精緻な高次構造を作り出すことは非常に困難です。
一方、分子の自己集合プロセスを使えば、数百ナノメートルにもおよぶ物質 (分子集合体) を作り出すことができます。ただし、分子の自己集合プロセスは自発的で、いわば「分子まかせ」の現象なので、有機合成や高分子合成のように段階的に進めたり、複雑な高次構造をつくり出したりすることは困難です。
今回、分子の自己集合を多段階で制御することに成功しました。また、化学反応のように、分子集合体の成長や分解にも位置選択性があることを見出しました。このような自己集合プロセスを利用して、分子集合体内部における分子の配列や組成を変え、複雑な高次構造を創出することが可能となりました。
本成果は、2023年6月2日午前0時 (日本時間、真夜中) に国際学術誌「Nature Chemistry」にオンライン掲載されます。