理化学研究所 (理研) 革新知能統合研究センター分子情報科学チームの寺山慧特別研究員 (研究当時、現横浜市立大学大学院生命医科学研究科准教授) 、隅田真人特別研究員、津田宏治チームリーダー (物質・材料研究機構 統合型材料開発・情報基盤部門 NIMS招聘研究員) 、物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の
田村亮主任研究員らの共同研究チームは、「例外」の発見に特化した人工知能 (AI) 「BLOX」を開発しました。さらにこのAIを用いて、例外的な光を強く吸収する低分子量の有機化合物を複数発見することに成功しました。本研究成果は、材料分野のみならず、幅広い科学分野における例外的事象の探索に活用されると期待できます。
これまでに材料開発を飛躍的に発展させてきた要因は、予想や想定ができない、いわば例外の発見でした。しかし既存のAIでは、人間が望む材料特性を予め設定することで新材料を開発してきており、例外的な物質を探すことはできませんでした。
今回、共同研究チームは、機械学習をうまく組み合わせることで例外の度合いを数値化し、例外的な物質を効率的に発見するAIを開発し、「BLOX」と名付けました。BLOXを検証するために、量子力学に基づいた分子シミュレーション技術と組み合わせることで、例外的な光吸収特性を持つ有機化合物候補を多数発見しました。そのうちの8個を実際の化合物で評価したところ、250ナノメートル (nm、1nmは10億分の1メートル) 以下や450nm以上の波長の光を強く吸収する例外的な特性を持つことを確認しました。このような化合物は、色素や有機太陽電池などの機能性材料として有用です。
本研究は、科学雑誌『Chemical Science』の掲載に先立ち、オンライン版 (5月28日付 : 日本時間5月28日) に掲載されます。