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金属ナノワイヤーネットワークによる脳機能模倣技術

~記憶や学習などの脳活動と同様な通電経路の揺らぎを再現 新概念メモリ技術への展開に期待~

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)

NIMSを中心とする国際共同研究チームは、多数の金属ナノワイヤーからなるニューロモルフィックネットワーク材料を作製し、「記憶」「学習」「忘却」さらに「覚醒」「鎮静」など人間の脳特有の高次機能に似た特性が、材料の電気特性として発現することを見出し、その起源を明らかにしました。

概要

  1. NIMSを中心とする国際共同研究チームは、多数の金属ナノワイヤーからなるニューロモルフィックネットワーク材料を作製し、「記憶」「学習」「忘却」さらに「覚醒」「鎮静」など人間の脳特有の高次機能に似た特性が、材料の電気特性として発現することを見出し、その起源を明らかにしました。
  2. 近年、人工知能 (AI) 関連技術は目覚ましい進歩を遂げており、私たちの生活の中にも様々な形で浸透しつつあります。AI技術は、脳型の情報処理ですが、お手本である人間の脳の動作メカニズムについてはほとんど解明されておりません。もちろん、神経細胞そのものや神経細胞同士の連結部 (シナプス) など脳の重要な構成要素については精密な理解が進んでいます。しかし、要素の集合体である脳が、どのようにして学習、記憶、忘却という機能を発現しているのか、なぜ覚醒、鎮静などの状態が生じるのかなどの様々な疑問に対する明確な回答はなく、生きた脳を扱う実験の困難さもあいまって、脳は「神秘の臓器」とも言われております。そのため、脳に類似した機能を発現する材料やシステムを創製し、そのメカニズムを解明すれば、脳型情報処理に新しい可能性を見出すのみならず、脳科学の進歩にも貢献するものと期待されています。
  3. 今回、共同研究チームは、1ナノメートル程度のポリマー絶縁体 (PVP) 被覆を施した銀 (Ag) ナノワイヤーを集積して、複雑なネットワークを組み上げました。このネットワーク中では、ナノワイヤーとナノワイヤーとが接触する「接点」が「シナプス的に動作する可変抵抗素子 (シナプス素子) 」として働くため、多数のシナプス素子が複雑に接続されることとなり、神経細胞網を模倣した「ニューロモルフィックネットワーク」が出来上がります。このニューロモルフィックネットワークに電圧を印加して電流を流したところ、あたかも材料が試行錯誤しているかのように、より適切な (低消費電力で電流を流せる) 通電経路を探索していく様子が観測されました。研究チームは、通電経路の形成、維持、解消などの過程を、電流の時間変化として計測し、それらの過程が常に揺らぎつつ進行することを見出しました。このような、通電経路の形成、維持、解消が[脳の学習、記憶、忘却」に、揺らぎの変化は「脳の覚醒、鎮静」に似ています。これら脳機能模倣とも言えるニューロモルフィック材料の特性は、ニューロモルフィックネットワーク中で多数のシナプス素子の抵抗が連携しつつ最適化していく自発的・創発的現象に起因することを明らかにしました。
  4. 現在、研究チームはニューロモルフィックネットワーク材料を特徴づける創発性・自発性を活かした脳型メモリの開発に取り組んでいます。例えば、現在のコンピュータが「時間と電力を使ってでも最適な解を導く」正確無比なシステムであるのに対し、「真に最適ではなくとも許容範囲内の判断を迅速に提案する」機能を備えたメモリの実現を目指しています。また、本研究成果が、脳型の情報処理とは何かを「解き明かす」ための、重要な一歩になるものと期待しています。
  5. 本研究成果は、国立研究開発法人物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 (WPI-MANA) の中山知信(別ウィンドウで開きます) 副拠点長、Adrian Diaz Alvarez博士研究員、オーストラリア シドニー大学 物理学専攻のZdenka Kuncic教授、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校 カルフォルニアナノシステム研究所の James K. Gimzewski 教授らからなる国際共同研究チームによって行われました。なお本成果は、オープンアクセスジャーナルScientific Reports誌にてオンライン公開 (公開日2019年10月17日) されています。

「プレスリリース中の図 : (a)研究チームが作製した「ニューロモルフィックネットワーク」の顕微鏡写真。ナノワイヤーが交差する接点が多数含まれており、その各接点がシナプス素子として働く。(b)人間の脳と、それを構成する神経細胞ネットワーク。」の画像

プレスリリース中の図 : (a)研究チームが作製した「ニューロモルフィックネットワーク」の顕微鏡写真。ナノワイヤーが交差する接点が多数含まれており、その各接点がシナプス素子として働く。(b)人間の脳と、それを構成する神経細胞ネットワーク。



掲載論文

題目 : Emergent dynamics of neuromorphic nanowire networks
著者 : Adrian Diaz-Alvarez, Rintaro Higuchi, Paula Sanz-Leon, Ido Marcus, Yoshitaka Shingaya(別ウィンドウで開きます), Adam Z. Stieg, James K. Gimzewski, Zdenka Kuncic, and Tomonobu Nakayama(別ウィンドウで開きます)
雑誌 : Scientific Reports
掲載日時 : 2019年10月17日 : オンライン公開済み
DOI : 10.1038/s41598-019-51330-6(別ウィンドウで開きます)


本件に関するお問合せ先

(研究内容に関すること)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
国際ナノアーキテクトニクス研究拠点 
MANA主任研究者/ナノ機能集積グループ
グループリーダー
中山 知信 (なかやま とものぶ)
TEL: 029-860-4129
FAX: 029-860-4886
E-Mail: NAKAYAMA.Tomonobu=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
(報道・広報に関すること)
国立研究開発法人 物質・材料研究機構
経営企画部門 広報室
〒305-0047 茨城県つくば市千現1-2-1
TEL: 029-859-2026
FAX: 029-859-2017
E-Mail: pressrelease=ml.nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)
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