近年、さまざまなデータを活用する超スマート社会の実現に向けIoT機器の爆発的増加が予想されており、多数のIoT機器に電力を供給する小型自立電源の開発が求められています。中でも、温度差を利用する熱電発電はその一翼を担う発電技術として期待されています。しかし、これまでの熱電材料は希少元素や毒性元素が含まれており、環境中のわずかな温度差を利用した自立電源として大規模な普及を目指すためには、環境調和性・耐酸化性・機械特性を併せ持ち、室温から200℃までの低温度域で高い出力を得られる高性能な熱電発電モジュールの開発が望まれていました。熱電発電モジュールの開発には、希少元素や毒性元素を含まない熱電材料の高性能化と、信頼性を持つ接合技術、量産化が可能なモジュール化技術を確立する必要があります。
これらを踏まえ、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) 、国立研究開発法人物質・材料研究機構、アイシン精機株式会社、国立大学法人茨城大学は、2018年度から鉄-アルミニウム-シリコン系熱電材料の高性能化とモジュール化の技術開発事業を進めてきました。
今回、4者は、鉄-アルミニウム-シリコン系熱電材料を高性能化させ、低温熱源を用いてのIoT機器の駆動やBLE通信が可能となる発電量を得る事に成功し、この熱電材料を使った小型熱電発電モジュールを世界で初めて開発しました。この熱電発電モジュールは容易に入手できる汎用元素のみで構成されるため、従来のビスマス-テルル系化合物による熱電発電モジュールに比べて熱電材料費を1/5以下と大幅に削減できる可能性があり、モジュール全体の製造コストの低減と量産化が見込まれます。また、熱的安定性や耐久性にも優れることから、各種IoT機器と組み合わせた自立電源一体型システムの開発へと大きく前進することが期待されます。
本成果を通じて、将来の増加が予想されるIoT機器への電力供給を目指し、室温から200℃までの低温度域での微小温度差を用いた自立電源の本格的な普及と社会実装を推進します。
なお、本研究成果は、2019年8月29日から30日まで、東京ビッグサイト (東京国際展示場) で開催される「イノベーション・ジャパン2019」で、IoT機器の試作機とともに展示します。