高価な触媒を使わず常圧のアンモニア合成に成功

~化学肥料の合成や、アンモニアによる水素貯蔵・輸送などの低コスト化に期待~

2017.09.28


国立研究開発法人物質・材料研究機構

NIMSは、化学肥料などの原料で、常圧での合成には高価な触媒が必要だったアンモニアを、安価な液体ナトリウムに窒素と水素の混合ガスを通すだけで合成する反応を発見しました。

概要

  1. NIMSは、化学肥料などの原料で、常圧での合成には高価な触媒が必要だったアンモニアを、安価な液体ナトリウムに窒素と水素の混合ガスを通すだけで合成する反応を発見しました。アンモニア合成の低コスト化につながる技術として期待されます。
  2. アンモニアは、化学肥料などの原料として年間1億7千万トン以上が合成されています。また、次世代エネルギーとして期待される水素は、アンモニアに変換することで安全に貯蔵・輸送できるため、将来的な需要の増加も見込まれています。その量産には、約100年前に工業化されたハーバー・ボッシュ法が現在も使われており、窒素と水素を200~400気圧の高圧下で反応させています。近年、より安価な合成を目指し、常圧での合成法が活発に研究されていますが、ルテニウムなど高価な触媒が必要であったり、アンモニア合成までの過程で様々な化合物に変換する必要があるなどの課題がありました。
  3. 今回、NIMSの研究チームは、安価なナトリウムを液体にして、窒素と水素の混合ガスを泡状に供給するだけのシンプルな方法で、常圧で微量のアンモニアが合成されることを確認しました。ナトリウムは、アンモニア合成に必要な窒素原子間の強い結合を解離できると考えられていましたが、低温では水素と反応してしまいます。そこで、500℃以上の高温で液体にして水素との反応を抑えることで窒素が解離され、その窒素が水素と反応し、アンモニアが合成されたと考えられます。
  4. 今回発見した、安価なナトリウムを使った常圧でのアンモニア合成反応を実用化できれば、装置の小型化と合成の低コスト化が実現できます。現在はまだ効率が低いですが、今後、窒素・水素混合ガスの気泡内部の圧力を高くするなど、効率を高くする検証実験を行う予定です。
  5. 本研究は、機能性材料研究拠点 超高圧グループの川村史朗主任研究員を中心とするメンバーによって行われました。本研究成果は、Scientific Reports誌の2017年9月14日発行号にてオンライン版で掲載されています。

「液体ナトリウム中でアンモニアが合成されるイメージ図」の画像

液体ナトリウム中でアンモニアが合成されるイメージ図



本件に関するお問合せ先

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機能性材料研究拠点 超高圧グループ
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