白金触媒表面への酸素吸着反応に顕著な分子配向依存性を発見

~触媒酸化反応効率の重要な支配要因を解明~

2017.03.17


国立研究開発法人 物質・材料研究機構

国立研究開発法人物質・材料研究機構の研究グループは、分子の向き (配向) を制御した独自開発の酸素分子ビームを用い、白金 (Pt) 触媒表面への酸素吸着反応に顕著な分子配向依存性を発見しました。

概要

  1. 国立研究開発法人物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点の倉橋光紀主席研究員と植田寛和若手国際研究センター (ICYS) 研究員は、分子の向き (配向) を制御した独自開発の酸素分子ビームを用い、白金 (Pt) 触媒表面への酸素吸着反応に顕著な分子配向依存性を発見しました。分子配向が触媒酸化反応効率に多大な影響を与える点を初めて明瞭に示す成果で、配向制御した反応解析の新手法を提示するとともに、本手法の酸化触媒研究における有効性を実証するものです。
  2. 白金表面への酸素吸着は、自動車排ガス処理反応や燃料電池電極での酸素還元反応などの素過程として重要です。一方、白金表面への酸素吸着確率は、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの他の貴金属表面に比べて低く、特に欠陥等を含まない平坦表面では酸素分子の運動エネルギーを0.5 eV以上に増加させても25%以上に増加しない特異な振る舞いを示します。この挙動は白金平坦面での低い触媒特性の一因と考えられますが、その起源はよく理解されていませんでした。
  3. 本研究グループは、独自開発の分子軸方位を制御した酸素分子ビームを用い、白金平坦表面での酸素分子吸着過程が分子配向により著しく異なることを見いだしました。表面に入射する酸素分子の運動エネルギーが低い条件 (0.2 eV以下) では、軸が表面にほぼ平行な一部の酸素分子しか表面に吸着できないために吸着確率が低いこと、運動エネルギーが高い条件 (0.5 eV以上) で吸着確率が25%程度の一定値を示すのは、白金表面に平行な分子と垂直な分子の異なる吸着挙動の競合によることを明らかにしました。
  4. 酸素吸着は触媒酸化反応の初期過程であるため、本結果は触媒反応全体の速度が、表面に飛来する酸素分子の配向に強く依存することを意味します。これらの結果は、白金使用量低減や触媒効率向上を目指した材料研究においても有益な情報となると考えられます。
  5. 本研究成果は文部科学省の科研費・基盤研究 (B) 「高エネルギー状態選別酸素分子ビームの開発と高感度表面反応立体効果計測」および NIMS第4期中長期計画プロジェクト「先進材料イノベーションを加速する最先端計測基盤技術の開発」の一環として得られました。
  6. 本研究成果は、ドイツ化学会雑誌Angewandte Chemie International Edition誌にVery Important Paperとして現地時間3月15日にオンライン掲載されます。

「プレスリリースの図1: Pt(111)表面への初期酸素吸着確率の分子配向依存性(赤 : 表面平行分子、緑 : 表面垂直分子、青 : ランダム配向分子)。」の画像

プレスリリースの図1: Pt(111)表面への初期酸素吸着確率の分子配向依存性(赤 : 表面平行分子、緑 : 表面垂直分子、青 : ランダム配向分子)。



本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 
先端材料解析研究拠点 表面物性計測グループ 主席研究員
倉橋 光紀 (くらはし みつのり)
〒305-0029 茨城県つくば市千現1-2-1
Tel: 029-859-2827 Fax: 029-859-2801
E-Mail: kurahashi.mitsunori=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道担当)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 経営企画部門広報室
〒305-0047茨城県つくば市千現1-2-1
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