地球深部の岩石中に中性水素原子が存在する可能性

- 地球内部の水素循環研究に新たな一石 -

2015.02.12
(2015.02.13 更新)


東京大学
広島大学
独立行政法人物質・材料研究機構
愛媛大学
独立行政法人理化学研究所
東京大学大学院理学系研究科・理学部

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の船守展正准教授らの研究グループは、物質構造科学研究所等の高圧地球科学およびミュオン物性科学の研究グループと共同で、ミュオン・スピン回転法を用いて、石英の高圧相鉱物であるスティショフ石に注入されたミュオン (µ+、ミュー粒子) の状態を調べ、それが電子1個を束縛したミュオニウムとして格子間位置に存在することを発見しました。

概要

東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻の船守展正准教授らの研究グループは、物質構造科学研究所等の高圧地球科学およびミュオン物性科学の研究グループと共同で、ミュオン・スピン回転法を用いて、石英の高圧相鉱物であるスティショフ石に注入されたミュオン (µ+、ミュー粒子) の状態を調べ、それが電子1個を束縛したミュオニウムとして格子間位置に存在することを発見しました。ミュオンはプロトン (H+、陽子) の軽い放射性同位体として物質中のプロトンの状態を模擬する粒子であり、ミュオニウムは中性水素原子 (H0) に相当することから、スティショフ石中の格子間位置に原子状態の中性水素が存在する可能性が示唆されます。これは、岩石を構成するケイ酸塩鉱物中で、水素は水酸基 (=水) として存在するとされてきた定説に一石を投じるものであり、地球深部の水素循環のメカニズム解明に向けて新たな可能性を開くものと期待されます。

なお、本成果は、東京大学大学院理学系研究科と物質構造科学研究所に加え、広島大学、物質・材料研究機構、愛媛大学、理化学研究所の共同研究チームによるものです。


「プレスリリースの図2 : 石英とスティショフ石の結晶構造。石英がケイ素と酸素の四面体 (SiO4) から構成されるのに対し、スティショフ石は八面体 (SiO6) から構成される。それぞれ、ケイ素は4配位と6配位であり、上部マントルと下部マントルにおけるケイ酸塩に特徴的な構造である。今回、石英だけでなく、スティショフ石の小さく異方的な空隙 (白色部分) に、ミュオニウムが存在することが明らかになった。」の画像

プレスリリースの図2 : 石英とスティショフ石の結晶構造。石英がケイ素と酸素の四面体 (SiO4) から構成されるのに対し、スティショフ石は八面体 (SiO6) から構成される。それぞれ、ケイ素は4配位と6配位であり、上部マントルと下部マントルにおけるケイ酸塩に特徴的な構造である。今回、石英だけでなく、スティショフ石の小さく異方的な空隙 (白色部分) に、ミュオニウムが存在することが明らかになった。



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東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
准教授 船守展正
TEL : 03-5841-4310
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准教授・広報室副室長 横山広美
TEL : 03-5841-8856
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