平成31年度文部科学大臣表彰をNIMS職員が受賞
2019.04.25
平成31年4月17日、平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰の表彰式が行われ、NIMS職員3名が表彰されました。
若手科学者賞(3件)
超分子化学に基づいた自立分散型化学センサの開拓研究
石原 伸輔 : 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点ナノマテリアル分野フロンティア分子グループ主任研究員
「超分子化学に基づいた自立分散型化学センサの開拓研究」
物理センサと比較して、化学センサは一般社会に十分普及しておらず、感度・選択性・安定性・操作性を高いレベルで満たす化学センサ材料が求められています。
石原氏は、分子間の相互作用や組織構造を精密に制御する超分子化学に基づいて、特定の化学物質と反応して連結点が切断される超分子ポリマーとカーボンナノチューブの複合体や、層状無機化合物に担持させたπ共役ホスト分子などを設計し、有害な化学物質を高感度かつ簡便に検出できる化学センサを開発しました。化学センサは、小型かつ、低コスト、低電力消費であり、スマートフォンへの搭載など、自立分散型化学センサとして有望であることも示されています。
本研究成果は、化学センサのIoT化による有害化学物質の常時モニタリングや早期発見など、安全・安心な社会の構築に貢献できると期待されています。
「革新的自己治癒セラミックスの創製と耐熱材料に関する研究」
航空機産業は日本の持続的発展に寄与する重要な成長産業である。一方航空機エンジンは将来国際的に甚大なCO2排出源となることが予想されることから、エンジンの高効率化を実現するタービン動翼用耐熱セラミックスの開発が急務である。
氏は、20年以上未解明であった耐熱セラミックスの自己き裂治癒機構を解明し、治癒活性相3Dネットワークという新規概念を用いた設計手法を提唱した。これは炎症期のみに着目した設計が主流な自己治癒材料分野において、修復気・改変期の高度化に着眼した新たな手法であり、従来材に比べ6万倍の治癒速度向上を達成可能であることを実証した。本研究成果は、高信頼性セラミックスタービン動翼の実現への大きな一歩であるとともに、航空機エンジンの高効率化・CO2排出量削減に貢献すると期待される。
「金属材料のマルチスケール組織解析と高特性化に関する研究」
金属材料の力学特性や磁気特性は微細組織と密接に関連します。優れた特性を発現させるには、微細組織をミクロから原子レベルにわたる幅広いスケールで精緻に解析し、そこから特性向上のための組織設計指針を呈示することが重要です。
佐々木氏は、電子顕微鏡や3次元アトムプローブ(3DAP)を用いた微細組織解析をもとにして、Dyなどの希少金属を用いることなく、ネオジム磁石に高い保磁力を発現させるための合金・組織設計指針を提示し、これを実証しました。また、優れた強度と成形性を有する時効硬化型展伸マグネシウム合金の開発にも成功するなど、金属材料の高特性化に関する研究で成果を上げました。
本研究成果は、輸送機器の軽量化や、自動車の電動化の促進によるCO2排出量やエネルギー消費量の削減に貢献すると期待されています。
関連ファイル・リンク
- 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点
- 構造材料研究拠点(RCSM)
- 磁性・スピントロニクス材料研究拠点