第7回国際標準化セミナー開催報告
7 回目となる今年度のNIMS 国際標準化セミナーは、NIMS 職員に標準化の意義や重要性を理解していただくとともに、標準化に関わる契機となるような情報の場となることを目的としました。
2024年12月16日 更新
- 開催日時 : 2024年12月2日(月) 13:30-15:20
- 開催場所 : 先進構造材料研究棟 5F 会議室
「化学分析及び機器分析による物質分析法の標準化」
川田 哲 (技術開発・共用部門 副部門長)
近年、標準化を事業活動に取り入れ活用することで、新規技術及び創出された新奇物質の戦略的な社会実装による市場の創造やマネタイズが推進されている。このような中、今回の講演会では、物質の商取引及び流通の活性化のため、筆者が継続的に活動してきた化学分析及び機器分析による分析法の標準化を報告する。
企業においては、海外との商取引拡大のため1990年頃から普及し始めたISO9001やISO14000の取得により企業価値を高める活動が活発となる中、物質中の元素定量分析においても分析結果創出に必要な技術的適格性の証明及び分析結果の国際的な相互承認が可能となるISO17025(試験所認定制度)の取得が推奨されるようになった。化学分析におけるISO17025を取得するためには、創出される定量分析結果に不確かさを付与することが必須条件となっており、この不確かさの算出については国際的な共通化活動が進められてきた。
本講演では、化学分析における不確かさの基本的概念を述べると共に物質分析法の中で参照法となる化学分析法のポジショニング、更に分析法標準化の推進による商取引拡大の例を紹介して頂きました。
「液化水素関連機器の研究開発を支える材料評価基盤の整備」
小野 嘉則 (技術開発・共用部門 材料データプラットフォーム 極限環境材料データユニット ユニットリーダー)
水素の社会実装を促すには、大規模な需要の創出と供給設備の大型化等を通じた供給コストの削減が求められます。供給コストを低減するには、水素サプライチェーン実証事業等の既存技術と比較して、大型化・高効率化を通じて各構成機器の設備コスト・運転コストを低減していくことが必要です。しかし、液化水素の場合、極低温や水素環境といった過酷な条件で使える材料は限られるため、コストをかけずに大型化するには技術的なハードルが高いのが現状です。
NIMSでは、経済産業省が策定した水素に関する研究開発・社会実装計画に基づき、NEDOが推進する「グリーンイノベーション(GI)基金事業」の「大規模水素サプライチェーンの構築」プロジェクトに課題提案し、2021年度に採択されました。本課題では、液化水素関連機器の材料に関する規制見直しや技術開発力強化等に資するため、極低温水素環境下での機械特性を評価するための試験設備を整備し、その設備を用いて材料データベースを構築し、その利活用の促進を図ることを目標としています。
本講演では、弊機構のGI基金事業の概要と進捗を紹介して頂きました。


川田 哲 副部門長による講演
小野 嘉則 ユニットリーダーによる講演