臨時増刊第2号

2011.12.22 発行


今号の内容


 (独) 物質・材料研究機構 (NIMS) より
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      NIMS『使える ! メールマガジン』  臨時増刊号 2011.12.22
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   ☆★注目のプレスリリースが出ましたのでお知らせします★☆



『レーザーを照射するだけで、ナノサイズの高分子ワイヤーがニョキっと
  生える。しかも各種ナノ材料のドーピングが可能で機能性を付加できる
  画期的な作製法が開発されました。分子デバイスの開発に大いに役立つと
  見られています。』



◆12月21日公開 プレスリリース
  
  『パルスレーザー照射による
         世界初の機能性高分子ナノワイヤー作成技術を開発』
      ~分子デバイス開発に飛躍的な促進の可能性~



 ナノサイズの細い線、つまりナノワイヤーは、超微細な次世代半導体などの
配線やデバイスの作製に不可欠なものとして、世界の研究機関が開発にしのぎ
を削っています。
 通常、ナノワイヤーは金属などの無機材料で作りますが、最近注目を集めて
いるのが高分子材料にした「高分子ナノワイヤー」です。なぜでしょうか?

 高分子ナノワイヤーには無機材料ナノワイヤーにはない複数の利点があり、
それが産業上重要なものなのです。高い柔軟性はフレキシブル配線を可能にし
製品の自由度を増します。光学的に透明なため、センサーや光素子、光スイッ
チなど新たなナノデバイスへの応用も可能です。
 しかし ! 利点の多い高分子ナノワイヤーの作製には2つの課題がありました。
サイズと添加材です。従来の作製法では、直径が数百nmという比較的太い
サイズのものを作るのが限界でした。これでは、「量子サイズ効果」という、
極限のサイズで初めて発揮される性能を利用することができません。また、
ナノワイヤーは単なる「電線」としての利用だけでなく、添加材を加えること
で新たな機能を持たせることも重要ですが、添加方法が非常に難しかったのです。

 NIMSでは、2008年、高分子ナノワイヤーの作製法の概念をガラリと変え
る発見をしました。
 従来の高分子ナノワイヤーは、微細な孔の開いたアルミナを鋳型にして、
そこに高分子材料を溶かし込んだあと、鋳型のアルミナを溶かすことで作製する
のが一般的でした。この方法だと、サイズが細くても300nm程度が限界であること
と、鋳型を溶かす薬品に耐えうる高分子しか利用できなかったのです。
 NIMSが開発した方法は、原料の高分子にレーザーを照射するだけで、まるで
生き物のように高分子ナノワイヤーがニョキっと生えてくるというものです。
レーザーの照射位置を変えるだけで、任意の位置にナノワイヤーを作製でき、
しかもサイズは従来の限界より1桁小さい数十nm。さらに全ての作業が空気中で
行えるという常識破りの簡便な方法です。これにより、課題だった1つ、サイズ
の問題が解決できました。

 そして今回、2つめの課題だった様々な機能性材料の添加 (ドーピング) が
可能になりました。その方法は、原料にする高分子の薄膜をガラス基板上に作り、
その膜にドーピングしたい材料を分散させます。分散が困難な材料の場合は、
スプレーなどで表面に存在させるだけでもOKです。こうして準備した材料に
非常に短い時間だけ光を放射するレーザーを照射すると、これまで難しかった
機能性ナノ材料を含んだ高分子ナノワイヤーがはえてきます。
 プレスリリースでは、例として高分子材料としてポリスチレン。機能性を
発揮させるナノ材料として酸化鉄ナノ材料をドーピングした高分子ナノワイヤー
の写真を紹介しています。
 この写真は、走査透過型電子顕微鏡という表面も内部も観察できる特殊な
電子顕微鏡で撮影されました。高分子ナノワイヤーの内部にも表面にも鉄のナノ
粒子が散りばめられている様子がわかります。このナノワイヤーの場合、ドーピ
ングされた酸化鉄ナノ粒子によって、単なるナノワイヤーが磁場の中で運動する
ことが期待されます。生物の鞭毛のような運動を引き起こし、人体の血管の中を
移動する生体用マイクロマシンの駆動源としての応用などが可能になるかも知れ
ません。


 ちなみに、このサイズの写真を鮮明に撮ることができた新型電子顕微鏡の威力
も必見です。ぜひ詳細をNIMSのプレスリリースでご確認ください。

 → http://www.nims.go.jp/news/press/2011/12/p201112210.html

 機能性高分子ナノワイヤーの新合成法に興味のある方は、お気軽にお問い合わ
せください。

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