六方晶窒化ホウ素 (h-BN) は、窒素原子とホウ素原子からなる黒鉛類似の結晶構造を持つ化合物であり、化学的安定性、耐熱性等に優れるために断熱材や絶縁体として、あるいはその層状原子構造に由来する機械的性質から摺動材料などとして長年実用に供されていますが、電子材料としての応用はまったく未知数でした。
谷口フェローらは、高圧下における高反応性のアルカリ土類金属系窒化物溶媒による高純度窒化物単結晶の合成技術開発と生成物質の光物性研究により高純度h-BN単結晶を世界で初めて合成しました。この技術をもとに水銀レス環境対応型深紫外線発光源プロトタイプの試作や量産化が可能な常圧合成プロセスへの展開を行う一方、米コロンビア大学と共同で、この高純度h-BN単結晶が当時盛んに研究されていたグラフェン素子の基板材料として優れた特性を示すことを見いだしました。これらの技術は、その後の二次元原子層科学における新しい発見を可能とし多くの優れた二次元物理学の研究成果の基礎となりました。