令和5年 秋の叙勲について
令和5年秋の叙勲
2023.11.27
令和5年 秋の叙勲受章者が令和5年11月3日付で発令され、熊倉浩明 元物質・材料研究機構 超伝導材料研究センター長 及び 羽田肇 元物質・材料研究機構 物質研究所 電子セラミックスグループディレクターが瑞宝小綬章を受章しました。
瑞宝小綬章
熊倉 浩明 (元物質・材料研究機構 超伝導材料研究センター長)
各種超伝導材料の線材化研究を進め、微細組織制御により実用的に重要な臨界電流特性の向上を図るとともに、マグネットを試作して励磁試験を実施したことで超伝導材料研究の推進に貢献しました。
ビスマス系酸化物高温超伝導線材の高性能化とこれを用いた超伝導磁石の開発
酸化物高温超伝導体の一種であるBi2Sr2CaCu2Ox(Bi-2212)を用いた線材において、部分溶融 - 徐冷熱処理を適用して実用的に重要な臨界電流密度Jcを大幅に向上させ、25テスラという強磁界において世界最高の10万アンペア/cm2以上の値を得ました。また、この線材を用いてBi-2212磁石を作製し、既存の金属系超伝導磁石と組み合わせることにより発生磁界のかさ上げを図りました。これによって超伝導磁石の発生磁界の世界記録を更新することに成功し、酸化物高温超伝導体による強磁場発生の先鞭をつけました。
高性能MgB2超伝導線材の開発
PIT法によるMgB2超伝導線材において、原料粉末への芳香族炭化水素添加により、従来のSiC添加よりも高いJcを達成し、これ以降盛んになるMgB2への有機物添加の先鞭をつけました。また、MgB2の充填率向上を目的として、従来からあったMgをB層に拡散によって供給してMgB2を生成する方法を改良し (内部Mg拡散 (IMD) 法と命名) 、充填率がほぼ100%のMgB2線材を作製しました。これによって20K、4テスラで20万アンペア/cm2と実用上十分なJcをMgB2線材において得ることに世界で初めて成功し、MgB2線材が液体ヘリウム不要の超伝導線材として有望であることを示しました。また、IMD法線材を用いて超伝導磁石を試作し励磁試験を実施しました。
高性能Nb3Al超伝導線材の開発
臨界磁界や機械的強度が従来の実用Nb3Sn線材よりも優れているが結晶粒が粗大化してJcが劣っていたNb3AlやNb3(Al,Ge)線材に対して、レーザービーム照射や電子ビーム照射などの高エネルギービーム照射法を考案して素線材を急速加熱 - 急速冷却することにより結晶粒を微細化することに成功しました。これによって20テスラ以上の強磁界において実用Nb3SnよりもJcを大幅に高めることに世界で初めて成功し、Nb3Al線材が強磁場用超伝導線材として有望であることを示しました。
羽田 肇 (元物質・材料研究機構 物質研究所電子セラミックスグループディレクター)
持続可能な環境に適用したセラミックス材料プロセス創製に関わり、新たな機能性材料の道を拓くことに貢献しました。
酸化亜鉛基新規機能性材料創成のための新規合成法の開発
バリスタ特性や蛍光体、あるいは光触媒性などの機能を有する酸化亜鉛基材料に新たな機能を付与すべく、新しい合成法を開発し、GaNにも対抗しうる新規電子材料の創成に貢献しました。
高密度セラミックス創成を目指した酸化物合成プロセスの開発
気孔等の欠陥に起因した透光性の減少などセラミックス特有の欠点を克服すべく、これらの欠陥のない高密度セラミックス創成を目指し、新たな酸化物合成プロセスを開発し、セラミックスに新規応用展開をもたらす業績を残しました。
非平衡無機材料の研究開発
化学センサや触媒等の材料開発に着目し、非平衡プロセスを駆使した合成手法を発明することで、ナノ粒子のパターン形成や大比表面積を有する粉体形成に成功し、センサの超小型化や可視光応答光触媒等の新規材料創成に向けての重要な指針を与えました。