2025年09月25日
実用化が期待されている水素貯蔵材、水素化ホウ素ナトリウムの利用を促進させる安価な鉄系触媒を開発しました。

水素社会を実現するための大きな課題の一つが、水素の効率的な貯蔵・放出です。水素化ホウ素ナトリウム(SBH)は水との反応で室温でも水素を放出する水素貯蔵材ですが、この反応には貴金属等からなる高価な触媒が必要でした。
今回の研究では、従来は酸化に対して不安定なため応用研究が進展してこなかった混合原子価鉄、グリーンラストを使った安価で高性能な触媒を開発しました。グリーンラスト粉末を塩化銅溶液に浸すことで、板状のグリーンラスト粒子の端面に活性サイトとなる酸化銅微粒子が固定されることが分かりました。太陽光を照射するとグリーンラスト中の電子が酸化銅微粒子を経由して反応物に移動し触媒反応を更に促進することも分かりました。
この新しい触媒は安定で、かつ、既存の貴金属系触媒に匹敵する、あるいは、凌駕する触媒活性(触媒回転頻度)を示しました。最近、安価なSBH製造・再生プロセスが確立され、また、SBHを利用した水素燃料電池船のパイロットプロジェクトも実施されていることから、今回の成果によって多様な水素モビリティの実用化が促進さる可能性があります。
References
Journal | ACS Catalysis |
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Title | A Catalyst for Sodium Borohydride Dehydrogenation Based on a Mixed-Valent Iron Hydroxide Platform |
Authors | Ezz-Elregal M. Ezz-Elregal1,2,3, Koichi Shinohara4, Hamza El-Hosainy1,5, Takumi Miyakage6, Takashi Toyao6, Ken-ichi Shimizu6, Akio Iwanade7, Makoto Oishi7, Takuro Nagai7, Naoki Fukata1,8, Takumi Tsushima9, Hiroto Yoshida9, Mitsutake Oshikiri1, Yusuke Ide1,2 |
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DOI | 10.1021/acscatal.5c01894 |