ナノアーキテクトニクス材料研究センター(MANA)は、ナノテクノロジー・材料研究における独自のナノ材料創製技術、「ナノアーキテクトニクス(ナノの積み木細工技術)」を追究したボトムアップ型の基礎研究を推進してきました。先鋭的な機能を発揮するナノスケールのパーツを精密に合成し、集積、連結、複合化した新物質、界面の制御による新材料を創製し、高度な機能の実現を目指す「マテリアル・ナノアーキテクトニクス」という理念の具現化により、新材料・新機能を発掘し、優れた基礎研究成果の発信、様々な分野のイノベーションに繋がるシーズの創出を目的としています。これまでに、ナノシート、ニューロモルフィックデバイス、ナノフォトニクス熱制御素子、超分子材料などMANAオリジナルの成果を数々創出するとともに、近年では高性能熱電材料、量子マテリアル創製などへの新たな展開も進めています。更に、ナノアーキテクトニクスの概念のもとで培ったナノテクノロジーを基盤とした次世代半導体開発に向けた基礎基盤研究にも新たに踏み出しました。

併せて、国際性に富んだ研究環境を持つナノテクハブ拠点としての発展を目指すMANAは、文部科学省が2007年に創設した「世界トップレベル研究拠点形成促進事業(WPIプログラム)」に基づいて最初に設立された5つのWPI研究拠点のうちの一つです。これまで十数年に渡ってナノテクノロジー・材料科学分野での代表的な国際研究センターとして、多くの海外の大学、研究機関との共同研究などにより広範な研究のネットワークを構築し、挑戦的な研究活動を続けてきました。更に世界各国より多くの研究者、学生が集まって研究を行う体制も整備しています。これらはMANAでの研究生活を経験した400名を超える研究者がMANA alumniとして世界中で活躍しているなどの結果として表れています。
研究のオリジナリティー、国際的視点、イノベーションにつながる相互理解・連携の3点を重視しつつ、ボトムアップ型基礎研究の先には、成果の社会還元が求められるとの自覚も大切にしています。"成果"は直近の課題解決に留まらず、研究のブレークスルーをもたらす基礎的な知見、発見にも価値があり、そのためには長い目で研究を育てること、根気よく若手を育成することが重要と考えています。「ナノアーキテクトニクス」のさらなる深化を図り、2025年度はナノテクノロジー、量子材料に加え、新たに半導体材料研究をMANAの新研究分野として設定しました。引き続きこれら3分野のもとで新たな価値の創出、成果の社会還元に向けて努力を続けていく所存です。関係各位の温かいご支援をお願い申し上げます。
MANAセンター長 谷口 尚