環境研究のトピックス

3. 電極の空隙制御でリチウム空気電池の出力電流が10倍に
~超軽量&大容量バッテリー開発を加速、ドローンの抜本的長時間飛行化の実現へ大きな一歩~

◆ 概要

■従来の課題
リチウム空気電池は、リチウムと空気中の酸素を使って放電・充電する二次電池です。リチウムイオン電池と比べて5-10倍の高エネルギー密度化が可能で、電池の圧倒的な軽量化・大容量化を実現する蓄電技術として注目されています。しかしリチウム空気電池の電池反応は非常に遅く、極めて微弱な出力電流しか得られませんでした。
リチウム空気電池に蓄電されている大きなエネルギーを活用するには、リチウム空気電池の抜本的な高出力化が必要とされていました。

■成果のポイント
今回、研究チームはリチウム空気電池の高出力化に必要な電極を開発しました。カーボンナノチューブを用いて電極を高空隙化することで、酸素の高効率吸収が可能となりました。さらにこの電極を酸素の拡散輸送に優れる電解液と組み合わせることで、従来に比べて1ケタ以上の出力電流向上に成功しました。このリチウム空気電池の重さあたりの出力密度を調べたところ、ドローンがホバリングに必要とする電力を供給できることが分かりました。

■将来展望
今後、この成果をもとにリチウム空気電池セルのスケールアップを図ることで、小型ドローンやマイクロロボットの電源として利用できる超軽量&大容量バッテリーの開発を目指していきます。

■その他

  • ・本研究は、NIMSエネルギー・環境材料研究センター二次電池材料グループの野村晃敬主任研究員、成蹊大学理工学部の東翔太客員研究員(現所属:東京高専)、小沢文智助教、齋藤守弘教授からなる研究チームによって、JSTA-STEPトライアウト(課題番号:JPMJTM22AQ)、科学研究費助成事業(24K08154)およびNIMS連携拠点推進制度の一環として行われました。
  • ・本研究成果は、2025年2月9日にJournal of PowerSourcesのオンライン版に掲載されました。

電池のエネルギー密度と出力密度の関係