環境配慮の成果

2.環境負荷低減の取組み

(4)化学物質等の適正管理

1) 化学物質の使用状況

NIMSは、実験・研究用として多様な化学物質を使用していますが、2024年度にNIMSが購入した主な化学物質は、エタノール922.3kg、アセトン680.4kg、ジクロロメタン422.6kg、クロロホルム267.4kg、メタノール258.8kg、ヘキサン233.3kgでした。
化学物質は、取り扱いを誤れば職員等の健康被害だけではなく、環境汚染を発生させることにもなります。実験を行う前には、安全データシート(SDS)を読み、その性質をよく理解するとともに、有機溶剤、酸、アルカリ等を使用する際にはドラフトチャンバーを設置している化学系実験室で行うこととしています。また、化学物質の取り扱い等についての安全衛生教育を行い、事故及び環境汚染防止に努めています。
また、NIMS内で使用する化学物質の種類、量などを正確に把握するため、2006年度から薬品管理システムの運用を開始し、化学物質の購入量、使用量をデータ化しています。
労働安全衛生法の改正により、化学物質の使用前にその物質のリスクアセスメント(危険性、有害性の評価)の実施が求められるようになりましたが、NIMSにおいては、このリスクアセスメントも薬品管理システムを用いて行うことができるようにしています。
年間取扱量が1t(特定有害物質は0.5t)を超える化学物質については、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」に基づき、県への報告が義務付けられていますが2024年度は、規定数量を超えるPRTR法の対象化学物質はありませんでした。

2) 作業環境測定

NIMSは、職員等が化学物質により健康障害を発生することのないよう、化学物質を使用する実験室において、定期的に年2回作業環境測定を実施しています。
2024年度は、前期においては66実験室で43物質、後期においては72実験室で43物質の測定を実施しました。
測定結果は、管理区分1 ~ 3の3段階評価において、前期・後期とも全ての実験室で 「管理区分1(現状維持)」の評価結果となっております。今後もなお一層、作業環境の向上を図り、職業性疾病の未然防止に努めて行きます。

3) 研究排水の水質管理

NIMSが下水道へ放流する排水は、生活排水と研究排水です。研究排水とは、実験室の流しから排出される手洗い水や器具洗浄水で、これらの排水を研究廃水処理施設に集めて下水道に放流しますが、放流する前に水質測定を行っています。
研究排水を下水道に放流する場合は、下水道法により40以上の物質について水質基準値を超えないことが定められています。
2024年度におけるつくば3地区の研究排水の水質は、未処理状態においても水質基準を超えませんでしたが、施設内の廃水処理工程を通してよりきれいな排水にして放流しています。
なお生活排水系と研究排水系は、使用区域とその排水管系統が明確に区分されており、水質測定されないままの研究排水が下水道に放流されることはありません。
2024年度の排水量の内訳は下表のとおりです。

■ 2024年度排水量の内訳

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地区 廃水処理施設流量(m³)① 研究排水放流量(m³)② 生活排水量(m³)③ 総排水量(m³)②+③
千現地区 3,451.2 3,574.6 23,363.4 26,938
並木地区 4,491.0 4,475.0 51,070.0 55,545
桜地区 117.8 48.4 4,557.6 4,606
合計 8,060.0 8,098.0 78,991.0 87,089

公共下水道への放流は、生活排水と研究排水が合流して放流されます。

研究廃水処理設備(千現)

実験廃水処理施設(並木)

■ 2024年度水質測定結果

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測定
地区
pH BOD 鉱物油含有量 窒素 カドミウム
規制値 実測値 規制値 実測値 規制値 実測値 規制値 実測値 規制値 実測値
千現
地区
5.0〜
9.0
7.0〜
7.1
<600 <0.5〜
2.8
<5 検出限界
以下〜
<1.0
<380 <1.0〜
4.5
<0.01 <0.01
並木
地区
5.0〜
9.0
7.0〜
7.1
<600 1.1〜
8.7
<5 <1.0 <380 <1.0〜
4.9
<0.01 <0.01

地区
5.0〜
9.0
6.9〜
7.1
<600 <0.5 <5 検出限界
以下〜
<1.0
<380 <1.0〜
1.2
<0.01 検出限界
以下〜
<0.003

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測定
地区
総クロム 有機リン 総水銀
規制値 実測値 規制値 実測値 規制値 実測値 規制値 実測値 規制値 実測値
千現
地区
<0.05 <0.05 <1.0 <0.02 検出され
ないこと
不検出 <0.0005 検出限界
以下
<10 <1.0
並木
地区
<0.05 <0.05 <1.0 <0.02 検出され
ないこと
不検出 <0.0005 検出限界
以下
<10 <1.0

地区
<0.05 検出限界
以下〜
<0.05
<1.0 検出限界
以下〜
<0.02
検出され
ないこと
不検出 <0.0005 検出限界
以下
<10 検出限界
以下〜
<1.0

表中の数値は毎月の実測値(最小~最大)で単位はmg/ℓ(pHは除く)です。
研究などに使用された廃水を下水道に放流する前に、サンプリング検査(法的義務)をした分析結果です。
※有機リンについて「検出され
ないこと。」とは、排出基準を定める省令 第二条の規定に基づき環境大臣が定める方法により排出水の汚染状態を検出した場合において、その結果が当該検定方法の定量限界を下回ることをいう。

4) PCB廃棄物の保管

NIMSは、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有する施設設備は使用していません。過去に電気設備に使用されていたPCB含有絶縁油、PCB含有蛍光灯用安定器、コンデンサー類についても、2022年度に処分を完了致しました。これによりNIMS内における高濃度PCB廃棄物は全て廃棄手続きを完了しております

廃ポリ塩化ビフェニル(PCB)等は、人の健康や生活環境に係る被害を生じるおそれがある物質です。廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、廃PCB等を特別管理産業廃棄物のなかで特定有害廃棄物に指定しており、処理処分の施設等が整備されるまでは、事業者の責任において保管することになっています。

5) 大気汚染物

NIMSでは、空調熱源機器としてボイラーを設置しています。
2024年度の各地区の窒素酸化物排出量は、千現地区456.8kg /年、並木地区1123.4kg /年となりましたが、排出濃度の測定結果は、すべて大気汚染防止法で定められた規制値以下でした。また、すべてのボイラーは硫黄酸化物の発生を抑えるため硫黄分を含まない都市ガスを使用しています。

2024年度窒素酸化物排出量とボイラー等のばい煙測定結果

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地区 窒素酸化物
排出量(kg)
NOx排出
基準(ppm)
実測値
(ppm)
ばいじん排出
基準(g/m³N)
実測値
(g/m³N)
千現地区 456.8 150 <20〜32 <0.1 <0.01
並木地区 1123.4 150 <20〜26 <0.1 <0.02
桜地区

※1 実測値は、各地区とも複数施設の最小値から最大値を表示
※2 窒素酸化物排出量の数値は、定期的に実施しているばい煙濃度測定の結果から算出したもの

6) 高圧ガス使用状況

NIMSは、実験・研究用として多様な高圧ガスを使用しています。最も多く使用している高圧ガスは、アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガスなどです。その他、液体窒素、液体ヘリウムを実験機器等の冷却に用いています。これらのガスは大気に放出されても無害であり、環境への負荷はありません。

液化窒素貯槽(千現)

アルゴン・窒素製造施設(千現)

液化窒素貯槽(並木)

7) 騒音・振動・悪臭

NIMSは、騒音規制法、振動規制法の対象となる空調用の設備を設置しています。また、悪臭防止法の対象となる化学物質を使用しています。これらの騒音、振動、悪臭の測定を2025年2月に実施しました。
振動については、3地区の昼夜において振動規制法による規制基準値を下回る結果となりました。
悪臭については、特定悪臭物質22種のうち、NIMSで使用しているアンモニア、トルエン、キシレン、酢酸エチルについて測定を行い、すべて基準値を下回る測定結果となりました。

騒音測定中(千現地区)

下表は、最も騒音が大きいと予想される測定場所及び規制基準値の厳しい時刻の測定値を記載しています。騒音については、並木地区の夜間基準値である45dBに対し、敷地境界で46dBの測定結果となりました。これは実験用機器の稼働音によるもので、消音器を設置する対策を講じました。2025年6月に実施した再測定では、基準値以下(43 ~ 44dB)に改善したことを確認しました。

<騒音測定結果>

測定日:2025.2.26

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地区 規制基準値(dB) 計量結果(dB) 測定時刻
千現地区 45(夜間) 45(夜間) 21:00〜21:42
並木地区 45(夜間) 46(夜間) ※ 22:03〜22:42
桜地区 55(夜間) 45(夜間) 21:00〜21:30

騒音規制値: 千現・並木地区(第2種区域 敷地境界):朝50dB 昼55dB 夕50dB 夜45dB
         桜地区(第3種区域 敷地境界):朝 65dB 昼 70dB 夕 65dB 夜 55dB
         ※2025年6月18日再測定結果:43~44 dB