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構造デザインで磁性材料の横型
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磁気物性値が高い省レアアース
新規磁石化合物の合成に成功
電極の空隙制御でリチウム空気
電池の出力電流が10倍に
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∟(2)廃棄物の削減と再資源化
∟(3)グリーン調達
∟(4)化学物質等の適正管理
∟(5)構内緑地の保存
参考
▶ 安全衛生・防災の取り組み
安全衛生・防災の取り組み
関係機関との連携
近隣地域との交流
▶ 付録
環境研究のトピックス
2.磁気物性値が高い省レアアース新規磁石化合物の合成に成功
◆ 概要
NIMSは、ネオジム磁石を構成するネオジム鉄 化合物磁気物性値を上回る特性を持つSmFe系新規磁石化合物SmFe8.8N1.1の合成に成功しました。
持続可能な社会の実現のために二酸化炭素排出量の低減が求められています。そのため多くの機器の電動化が進んでおり、駆動モータの高特性化が求められています。ネオジム磁石はNd2Fe 14Bというレアアース・鉄・ホウ素の化合物で作られていますが、それが強い磁力を発生するために電動自動車の駆動モータとして多く使われています。しかし、ネオジム磁石は、電動自動車の動作温度である高温での特性が悪く、ジスプロシウムなどの重希土類元素を添加することで熱減磁を補っていました。ネオジムやジスプロシウムはサプライチェーンリスクが大きいため、これらの元素を使わない磁石化合物の探索が望まれていました。
TbCu7型の結晶構造を持つSm-Fe(1-7系)化合物は、Fe濃度をSm:Fe=1:10まで増加させることが可能なため高い磁化が期待されます。しかし、安定相であり異方性磁界が非常に大きいTh2Zn17型Sm2Fe17(2-17系)化合物が1-7系化合物組成の近くに存在するために、1-7系は注目されてきませんでした。今回の研究では、Sm-Fe(1-7系)化合物をベースにFe濃度を増加させたSmFe8.8N1.1化合物の単結晶薄膜の合成に成功し、その磁気物性値を測定したところ、世界最強の磁石材料とされるNd2Fe14Bを凌ぐ磁気特性、室温で非常に高い異方性磁界(約22テスラ)、より高い飽和磁化(1.64テスラ)、高いキュリー点(770ケルビン)を持つことを発見しました。
過去のSmFe7系合 金粉の報告例では、信頼性の高い磁気測定ができませんでしたが、今回単結晶膜を作製することにより、その磁気特性が従来の化合物よりも極めて高いことが実証されました。この化合物の磁気特性は高温でNd2Fe14Bを凌ぐことから、この化合物で磁石をつくることができれば、サプライチェーンの懸念のあるネオジムやジスプロシウムを使わなくても優れた磁石特性が得られると期待されます。また本化合物はレアアースの精製過程で生じる副産物であるサマリウムを用いていることから、レアアースのバランスの取れた利用の促進につながります。さらに高価なホウ素を必要としないために、資源的・価格的に有利な化合物と言えます。実用的な磁石の実現に向け、SmFe8.8N1.1を粉で大量に作る方法や、その粉を磁石の形に固めていくプロセスを開発していきます。
本研究は、NIMS磁性・スピントロニクス材料研究センターのA.R. Dilipan NIMSジュニア研究員、高橋有紀子グループリーダーらによって行われました。本研究は、文部科学省データ創出・活用型マテリアル研究開発プロジェクト事業JPMXP1122715503の助成を受けたものです。
本研究成果は、2024年5月10日に「Acta Materialia誌」にオンライン掲載されました。
図 世界最強の磁石材料とされるNd2Fe14Bを凌ぐ磁気特性、室温で非常に高い異方性磁界、
より高い飽和磁化、高いキュリー点を持つことを発見