反磁性体、常磁性セラミックスでも可能とする磁場を用いたバルク体における結晶配向制御
- 放電プラズマ焼結などの多岐の焼結手法との併用が可能であり、緻密に結晶配向を付与可能
- 熱伝導、イオン伝導、熱電特性、透光性などの結晶方位に依存する様々な機能特性制御
- 樹脂中などの種々のマトリックスへのセラミックスフィラー配向、短繊維などの一方向分散が可能
- ナイロンなどの造孔材の配向により多孔体における管状孔の整列制御が可能
近年、組成制御のしやすさや大型化のしやすさからセラミックスにおいて多結晶焼結体であっても透光性を付与し、その機能を利用する取り組みが求められるようになってきています。耐熱性、耐薬品などの耐過酷環境性を備える光学セラミックスは、レーザーやシンチレータ、蛍光体媒体などに資する材料となり、医療分野やセンサーでの使用が可能となります。
光学的機能はもとより、さらにセラミックスの特性を生かした電気伝導性、耐熱性や高強度といった機能を重畳させた先端セラミックスを創製すること目指しています。
多結晶セラミックスにおいて透光性を発現させるためには、欠陥を究極的に取り除いた緻密化が必要で、そのためには粒子合成・成形・焼結といった創製プロセスの一つ一つを理解し、微構造を精緻に制御することが重要となります。磁場や電場などの外場を用いたプロセスにも注目し、それらの有効性について明らかにするために磁場中プロセスでのその場観察などを用いてプロセス中で起こる現象を解明することも行います。さらに、光学特性測定以外のイオン伝導度の測定などに関しても、その高度化を行います。
バルクセラミックスにおける特性制御では、結晶粒径、粒界、第2相分散、結晶配向などの微構造制御が重要となり、そのためには創製プロセスの精緻な制御が必要となる。本研究では特に結晶配向に着目した微構造制御を行っている。
反磁性、常磁性セラミックスでは磁場の利用は難しかったが、コロイドプロセスを用いることでアルミナ、酸化亜鉛、炭化珪素などでも磁場による結晶配向を可能とし、さらに焼結時には磁場印加は不要であるため各種焼結手法を用いることが出来る。また、樹脂中におけるセラミックスフィラーの配向制御への展開も可能である。
反磁性体、常磁性セラミックスでも可能とする磁場を用いたバルク体における結晶配向制御
10T級の超伝導磁石であっても液体ヘリウムの供給が不要なタイプの使用が可能であり、その中での成形時にスラリー中で六方晶や正方晶などの結晶異方性を有する粒子が回転することにより、特定の結晶軸を揃えることが可能となる。
c軸が磁化容易軸となる場合には、c軸と磁場印加方向が平行になるように粒子が回転し、c軸が磁化困難軸となる場合にはc軸が磁場と垂直になるように回転する。成形時での磁場印加だけが必要であるために、その後の緻密化過程は従来の様々な緻密化手法を用いることが出来る。
例えば、多価カチオン伝導体であるAl2(WO4)3において、磁場の印加方法を静磁場と回転磁場とを用いることでb軸配向体とc軸配向体を造り分けることが可能であり、b軸を揃えた場合にc軸方向よりも伝導性が高くなることを見出している。また、ランダム体ではその間の特性となっている。また、アルミナにおいては成形体のパッキン構造を制御するためのコロイドプロセスと放電プラズマ焼結を駆使することで、ランダム配向体においても透光性を有する焼結体の作製が可能であることを示した(下図の青)。
しかし、アルミナは異方性を有するコランダム構造であるために粒界での複屈折により直線透過性のさらなる向上が困難であった。そこで磁場配向を用いてc軸を揃えることにより複屈折を抑制することに成功し、直線透過性に優れた多結晶アルミナを作製できることを実証している。
2次電池や燃料電池における電解質のイオン伝導性の向上、熱電材料などの異方性セラミックスにおける結晶配向による特性向上、および緻密化による直線透過性の向上を実証している。
今後は磁場強度を低下させる条件の探索とバッチプロセスから連続運転可能なプロセスの開発に取り組む。プロセスの改善によりさらに様々な材料への展開が可能となると期待される。
電気化学インピーダンスについて多様な解析を一つのプログラムで可能にする高機能なプログラムを開発しています。独自の簡易人工知能自動解析、拡張緩和時間分布解析などオリジナルな解析機能を実装しています。本プログラムは有償ライセンスで公開しています。
右図は開発した電気化学インピーダンス解析プログラムの概観図。従来の等価回路解析に加え、複数の緩和時間分布解析結果の比較などを示す。非理想的な形状のインピーダンス・スペクトルも直感的かつ容易に解析できます。
解析が難しい実測インピーダンス・スペクトルについて複数の手法により容易に解析できるプログラム開発。本プログラムは有償ライセンスで公開中。現在は有償の汎用解析プログラムIgor Pro© (WaveMetrics社製)マクロプログラムで開発。新規解析法は現在も開発継続中。今後の課題はスタンドアロンアプリ化。
超伝導磁石で容易に得られる10T程度の磁場を利用すると、水やプラスチックス、セラミックスのような様々な物質に対して、非接触で力学的効果を与えることが出来ます。これによって、異方性を利用した配向などの組織制御、物質の位置・移動の制御や、分離・分析、磁気浮上、重力効果の制御などの様々なプロセスが実現します。効果の表れ方や大きさは物質固有の性質に基づきますが、基本となる磁性はあらゆる物質が有するものであるので、条件を整えれば多くの物質に適用できます。
本研究では、磁場を利用した物質挙動制御について、磁場下で起こる現象の可視化やシミュレーションなどを通して理解を深め、空間磁場の設計も合わせて最適化を目指しています。
水に上向きの磁気力を作用させると浮上できます。
機能性セラミックス材料は、光学製品や電子機器、磁性体、フィルター、触媒など、現代社会の様々な場所に利用されており、先端研究では小型化や高性能化、高機能化を求められています。社会実装を議論する上では低コスト化も必要です。また近年では、環境問題や資源問題などの社会課題との共存も重要です。
こうした様々な課題解決が求められる先端的なセラミックス材料の研究では、ナノ領域に見出される特異な物性をマクロサイズの機能として顕在化させる材料創製研究が盛んに行われており、新たなプロセス技術の創出が求められています。私は、化学視点でこの研究に取り組み、従来技術では応用できなかった物質や物性の材料化を目指しています。
Al基材の表面をZnAl2O4に改質する水熱製膜技術
アルミは酸化しやすい両性金属なので、従来の水熱反応条件下では金属状態を維持できません。この課題を克服し、安価なアルミの表面だけを高機能なアルミ化合物“ZnAl2O4”にすることに成功しました。ZnAl2O4は、資源リスクが低い元素のみで構成される化合物でありながら、半導体、触媒、光学材料など様々な分野で実用化が議論されている高機能セラミックスです。
研究では、作製したZnAl2O4/Alデバイスが、高感度なガスセンサーとして機能することも確認しました。この技術は、低コスト化、小型化、複雑形状化などのニーズにも対応可能で、他の化合物合成にも応用できます。
究極の低次元デバイス構造を持つハイブリット化合物
従来物質とは異なる量子物性が顕在化する物質として、低次元マテリアルの研究が盛んに行われています。ナノサイズのこの物質を材料化するには、高度に配列させてデバイス構造にしなければなりません。これに対し、有望な基礎研究成果を見出しました。
我々が化学合成した物質は、遷移金属酸化物と有機物がナノレベルで周期配列したハイブリット構造のナノシートになります。興味深いことに、この物質内では遷移金属酸化物が擬一次元的な構造をとってシートの面直方向を向いて並んでいます。この構造体を利用すれば、シートを電極で挟むだけで究極サイズの一次元化合物デバイスができると期待できます。
物性物理と化学合成の視点から新しい機能性セラミックス材料の創製研究に取り組んでいます。研究では、水熱合成などの汎用的な技術を基盤に独自の手法や装置を開発し、従来技術では作れなかった材料の創出を目指します。
最近、アルミ表面をアルミ化合物に製膜する技術を開発しました。また、究極のデバイス化が期待できるナノシートの合成法を見出しました。これらの技術の汎用化を目指しています。
透明セラミックスは、残留気孔や不純物などの散乱源が極限まで取り除かれたファインセラミックスである。固体レーザー材料としても用いられており、一部の材料では単結晶を凌駕する高いレーザー出力が得られている。
光技術の進展には新しい光源を可能とする光学材料の開発が重要であることから、新しいレーザーセラミックスの実証や光学素子の接合技術開発を行ってきた。特に、既往技術では制限されていた光学的異方性材料の透明セラミック化とレーザー発振を実証しており、幅広い光学材料としての展開を目指している。
通常、透明セラミックスの作製には気孔を除去するために高温・長時間の熱処理が施される。
この場合、セラミックスを構成する結晶粒の大きさは光の波長以上となり、光学的異方性材料の場合は複屈折による粒界散乱が生じるが、結晶粒を光の波長に対して十分小さく制御すると、その影響は低減する。異方性セラミックスで単結晶並みの光学品質を得るために、微粉体の液相合成、通電加圧焼結による低温・短時間焼結を用いた結晶粒の制御を試みてきた。そして、図のように六方晶系のアパタイトで平均粒径100nm程度の緻密な透明セラミックスを実現し、さらに希土類を添加した材料においてレーザー発振を実証した。
今後、シンチレータ、白色蛍光体、生体光学材料、磁気光学材料など、幅広い光学分野への展開が期待できる。
高出力レーザーや白色光源の開発では、蛍光体で発生する熱問題の低減が重要である。特にレーザー材料では結晶内部の温度勾配が熱レンズ効果や熱複屈折効果を引き起こし、ビーム品質の劣化を招く。
このような課題を解決するために、高熱伝導率のサファイアとレーザー材料との高品質な接合を簡便な手法で実施し、熱効果が低減することを実証した。
現在、基礎的な評価を進めており、レーザー装置の高出力化だけでなく、多様な材料との接合組み合わせや高機能化を目指している。加工用レーザー光源だけでなく、白色照明などにも展開可能と期待している。