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[Vol. 94] 既存技術では困難であった、ピコリットル(pL)からナノリットル(nL)の微小液滴を自在に操作する基盤技術を実現

2026年01月30日

天神林独立研究者の研究チームは、ピコリットル(pL)からナノリットル(nL)スケールの液滴を付着せずに輸送可能な撥液技術を実現しました。

Graphic images Vol.94
「マイクロリキッドマーブルのワンダーランド」
ピンク色の粒子で包まれた小さな液滴「マイクロ・リキッドマーブル」は、液体でありながら固体のようにくっつきません。固体のように表面にくっつかず自由に転がりながら、液体のように分裂したり再び合体したりすることができます。この不思議な性質が、ミクロな流体操作の新しい世界への扉を開いています。
Copyright: MANA, NIMS and VIZCIE

ごく小さな液体の粒(液滴)を正確に動かして制御する技術は、病気の診断や薬の開発、再生医療といった分野で重要な応用が見込まれる、基礎となる技術です。
通常、液体は接触した表面に付着してしまうため、液滴を自在に動かすには液体をはじく「撥液表面」を用いる必要があります。しかしながら、従来の液体をはじく表面技術(撥液表面技術)では、液滴が非常に小さくなると十分な効果を発揮できず、マイクロリットル(μL)以下のサイズの液滴では、付着を抑制することが困難でした。

今回、MANAの天神林独立研究者らの研究チームはpLからnLスケールの液滴を付着せずに輸送可能な撥液技術を発表しました。天神林らは液滴表面にフッ素修飾したヒュームドチタニアナノ粒子を被覆することで、実質的に液体の表面を「固体化」し、液滴と表面の接触によって生じる摩擦を、ナノニュートン(nN)まで低下させることに成功しました。

注目すべきは、当該ナノ粒子で被覆したpL液滴表面は、分割したり合体したりといった流体としての特性を維持しつつもあたかも固体であるかのように表面には付着しないという点で、pL液滴を自在に輸送・配列・分割・合体できることを実証しました。

今後、液体を使い分けることで、ごくわずかな体積での化学反応や検出、1細胞レベルでの培養など、液滴の大きさを活かした新たなバイオケミカル実験の展開が期待されます。

References

Journal ACS Nano
Title Manipulating Pico- to Nanoliter Droplets on Surfaces without Sticking
Authors Mizuki Tenjimbayashi1,, Shunto Arai2, Hiroshi Mizoguchi1,Satoshi Ishii1
Affiliations
  1. National Institute for Materials Science(NIMS), 1-1 Namiki Tsukuba, Ibaraki 305-0044 JAPAN
  2. Research Center for Macromolecules and Biomaterials, National Institute for Materials Science (NIMS), 1-1 Namiki, Tsukuba, Ibaraki 305-0044, Japan
DOI 10.1021/acsnano.5c14919
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