デジカメでX線を計測し、元素分析・イメージングを行う技術を開発

~いつでもどこでもX線分析するユビキタス新時代へ~

2017.04.10


国立研究開発法人 物質・材料研究機構 (NIMS)

NIMSの研究グループは、通常の可視光用途のデジタルカメラをほぼそのまま用いながら、画像処理によりX線スペクトルを測定し、元素分析や元素イメージングを行う新技術の開発に成功しました。

概要

  1. 国立研究開発法人物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点 桜井健次上席研究員と趙文洋NIMSジュニア研究員は、通常の可視光用途のデジタルカメラをほぼそのまま用いながら、画像処理によりX線スペクトルを測定し、元素分析や元素イメージングを行う新技術の開発に成功しました。本研究成果により、X線分析はこれまで以上に手軽に行えるようになり、一層広い分野でいつでもどこでも使えるようになると期待されます。
  2. 物質はさまざまな元素から構成されており、その組成によって物理的・化学的性質が大きく左右されます。このため、物質の理解や新材料開発のために、含まれている元素の種類や量を分析することは重要です。物質にX線を照射した際に出てくる蛍光X線のエネルギーから元素の種類が、その強度から量がわかることが知られています。この蛍光X線分析を行うためには、専用のX線分光器やX線検出器が用いられています。さらに通常の分析に加え、どの元素が試料内のどの場所にあるかを調べる場合には、より高価な検出器や光学素子が必要でした。
  3. 今回、研究チームは、光学顕微鏡などに搭載されることの多い可視光用のCMOS素子を搭載したデジタルカメラをほぼそのまま利用して、蛍光X線による元素分析やイメージングを行う方法を見出しました。まず、レンズとセンサの間に、X線のみを透過させる不透明な薄い窓を取り付けます。試料から出てくる蛍光X線が、この窓を通ってCMOS素子に入ると電荷が作りだされます。作りだされた電荷の数を瞬時に計測すると、入ってきたX線のエネルギーを知ることができます。ただ、生じた電荷は複数の画素に別れて記録され、また、ある時は失われてしまうこともあります。そこで、電荷の複数画素への分散状態を調べ、本来持っていた電荷量と入射位置の両方を画像処理により復元する方法を確立しました。これにより、信頼性の高いX線スペクトルが安定に取得できるようになりました。実際に今回開発した手法で図のようなお皿を蛍光X線分析したところ、青の顔料が塗られている表側からのみコバルトが検出され、裏側からはコバルトは検出されませんでした。
  4. 研究チームは、さらにピンホールカメラの原理を利用し、その元素がどのように分布しているかを画像化することにも成功しました。今後は元素の移動を可視化する動画像の取得に活用し、化学反応の過程を追跡する研究などで材料開発に貢献したいと考えています。
  5. 本研究成果は、Scientific Reports (Springer Nature社のオンライン論文誌、DOI: doi:10.1038/srep45472) に掲載されます (オンライン公開 : 現地時間2017年3月31日) 。

「プレスリリースの図: 左図は測定のサンプルに用いたお皿の写真を示しています。可視光用のカメラですので、視覚的な形状や色彩を画像として記録することができます (本研究で用いたカメラでは白黒画像になります) 。右図はまったく同じカメラを使いX線のスペクトルを取得したものです。X線領域における色にあたるエネルギーの違いを識別し元素の分析ができます。」の画像

プレスリリースの図: 左図は測定のサンプルに用いたお皿の写真を示しています。可視光用のカメラですので、視覚的な形状や色彩を画像として記録することができます (本研究で用いたカメラでは白黒画像になります) 。右図はまったく同じカメラを使いX線のスペクトルを取得したものです。X線領域における色にあたるエネルギーの違いを識別し元素の分析ができます。



本件に関するお問い合わせ先

(研究内容に関すること)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構
先端材料解析研究拠点
上席研究員
桜井健次 (さくらいけんじ)
TEL: 029-859-2821
E-Mail: SAKURAI.Kenji=nims.go.jp
([ = ] を [ @ ] にしてください)

(報道・広報に関すること)

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